第17章 環境 この章は,温室効果ガス,大気汚染,廃棄物処理,公害及び下水道に関する統計を掲載している。 環境 国際連合(UN)や経済協力開発機構(OECD)等において環境指標の検討が進められ,OECDが開発した下記の「PSRフレームワーク」は,他の国際機関や各国等が環境指標を開発する際の基礎として広く用いられている。環境省が環境に関する幅広いデータを取りまとめ平成14年から刊行している「環境統計集」も主にそれを踏まえたものとなっている。 経済協力開発機構(OECD)の「PSRモデル」OECDでは,環境情報を体系的に整理し,指標化していくための概念的枠組として,「PSRモデル」が開発されている。これは,人間活動と環境の関係を「環境への負荷(pressure)」,「それによる環境の状態(state)」,「これに対する社会的な対策(response)」という一連の流れ(PSR)の中で包括的に捉えようとするものである。また,OECDの環境指標はこのPSRモデルが適用され,「コアセット指標」が主要ツールとなっている。PSRモデルの各要素は次のとおりとなっている。 <1> 環境への負荷(pressure) 環境への負荷を表す指標は,天然資源を含めた環境への人間の活動による負荷を表す。ここでいう「負荷」とは,直接的負荷(資源利用,汚染物や廃棄物の排出等)と同様に潜在的あるいは間接的な負荷(活動そのものや環境の変動傾向等)を網羅している。 <2> 環境の状態(state) 環境の状態を表す指標は,環境の質及び天然資源の質と量に関係し,環境政策の究極的目的を反映する。さらに環境の状態の指標は,環境の全体的な状況と時間の経過に伴う変化を示すよう策定されている。例としては,汚染物の濃度,野生生物及び天然資源の現状等がある。 <3> 社会による対応(response) 社会による対策を表す指標は,社会が環境面の課題事項に対策する程度を示す。例としては,環境への支出,環境に関する税及び補助金,廃棄物のリサイクル率等が挙げられる。 温室効果ガスの排出量 環境省が行政資料として取りまとめている「温室効果ガス排出量」による。近年,人間活動の拡大に伴って,二酸化炭素,メタン,一酸化二窒素,代替フロン類等の温室効果ガスが大量に大気中に排出されることで,地球温暖化が進行していると言われている。我が国が排出する温室効果ガスのうち,二酸化炭素の排出が全体の約91%(令和元年度)を占めている。平成4年5月に大気中の温室効果ガス濃度を安定化させることを究極的な目的とした気候変動枠組条約が採択され,6年3月に同条約は発効した。平成9年12月,京都で開催されたCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)において,京都議定書が採択され,17年2月に発効した。本議定書では先進国の温室効果ガス排出量について,法的拘束力のある数量化された約束を設定するとともに,約束達成のための国際的仕組みを導入することなどが規定された。さらに,2015年にフランス・パリで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において,気候変動に関する2020年以降の新たな国際枠組みである「パリ協定」(Paris Agreement)が採択された。 パリ協定には,世界共通の長期目標として「2℃目標」(世界的な平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分下方に抑えるとともに,1.5℃に抑える努力を追求すること)の設定等が位置づけられた。 産業廃棄物排出・処理状況調査 産業廃棄物排出・処理状況調査は,産業廃棄物の排出及び処理の状況を把握するため,昭和50年度から5年ごと,平成2年度以降毎年,環境省が実施している。この調査は,産業廃棄物排出量及び産業廃棄物の再生利用量,中間処理量,最終処分量等の処理状況について,都道府県別に調査しており,調査対象業種は,日本標準産業分類(第12,13回改定)を基に抽出した産業廃棄物の排出が想定される大分類18業種,対象廃棄物は廃棄物の処理及び清掃に関する法律に規定する産業廃棄物19種類とし396 17 環境
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