ここから本文です。
毎月の調査から得られる小売物価統計調査の調査価格は、次のような形で利用されています。
(1)消費者物価指数の作成の基礎資料として提供
小売物価統計調査は、消費者物価指数(CPI)を作成するための基礎資料を提供することを第一の目的としています。
消費者物価指数(CPI)は、世帯が購入する各種の財やサービスの価格等を総合した物価の変動を時系列的に測定するものであり、毎月、総務省統計局が公表しています。
消費者物価指数(CPI)は、経済活動が活発となり需給がひっ迫してくると上昇率が高まり、逆に経済活動が停滞し、需給が緩むと上昇率が低下する傾向にあり、経済政策を的確に推進する上で極めて重要な指標となっています。
また、年金等の給付見直しや最低賃金・診療報酬の見直しの際の基礎資料や、公共料金の上限値を決める際の資料として、私たちの生活に深く関わることで幅広く利用されています。
参考
小売物価統計調査の結果・小売物価統計調査の調査価格に基づき作成する消費者物価指数の利用状況
法令に基づく主な利用例
- 国民年金法・厚生年金保険法・国家公務員共済組合法
- 年金額の自動改定の基準
- 租税特別措置法
- 揮発油税等の課税の停止・停止解除を判断するための指標
- 都市再開発法施行令
- 補償金の支払いに係る修正率の算定方法
- 国土利用計画法施行令
- 土地の価格の物価等変動に応ずる修正率の算定方法
- 土地収用法第88条2の細目等を定める政令
- 損失の補償に関する修正率の算定方法
行政上の施策への主な利用例
- 日本銀行が金融政策を判断するための物価指標
- 年金等の給付見直し及び最低賃金・診療報酬の見直しの際の基礎資料
- 公共料金の上限値を決める際の資料
- 規制改革の効果を検証する際の基礎資料
など
その他
- 都道府県が作成する消費者物価指数(CPI)への利用
- 各国の国内総生産(GDP)の実質比較を行うことを目的とした、国際比較プログラム(ICP)のための価格データの提供
- 学術研究及び民間企業等における物価に関する分析の際の基礎資料
(2) 地方公共団体における利用
都道府県内の小売物価統計調査の調査価格が都道府県における小売価格や消費者物価指数(CPI)の作成に利用されています。
(都道府県が独自に消費者物価指数(CPI)を作成するために小売物価統計調査の調査票情報を利用する場合は、統計法により総務大臣の承認を得ることが必要とされています。)
(3) 国際比較プログラムのための価格データの提供
国際比較プログラム(International Comparison Programme:略称ICP)は、各国通貨の購買力平価を算定して、各国の国内総生産(GDP)の実質比較を行うことを目的とした国際的事業で、国際連合の提唱により実施されています。
購買力平価(Purchasing Power Parities:略称PPP)とは、一国の通貨と他国の通貨との換算比率の一種で、それぞれの通貨の購買力(買える財やサービスの量)が等しくなるように計算して求められます。GDPの国際比較に当たっては、為替レートではなく、国内の広い範囲の財・サービスの価格を反映し、かつ、資本移動の影響を受けにくく安定性のある購買力平価によって通貨を換算することが適切であり、これに対応して開始されたのがICP事業です。
購買力平価を算定するためには、世界共通の財・サービスの品目・銘柄リストに基づき、各国が価格データを提供する必要があります。我が国は、ICP事業のために小売物価統計調査で得られた価格のほか、東京都区部において特別調査を実施して得た財・サービスの価格を提供しています。
次のグラフは、2008年を基準年とするICP事業の結果の一部として、OECD(経済 協力開発機構)加盟34か国の平均値を100とした場合の2011年の各国の物価水準を示しています。日本の物価水準は126で第6位となり、OECDの平均値より26ポイント高く、一番低いトルコの約2.2倍となっています。