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第3章 家計からわかる暮らしの特徴
家計支出の内容は、住んでいる地域によって違ったり、暮らしぶりの変化に伴い変わります。ここでは、家計からわかる暮らしの特徴を取り上げてみます。
1. 食生活から垣間見える土地柄
消費者の食生活には土地柄によって特徴が表れます。
都道府県庁所在市及び政令指定都市別の結果(二人以上の世帯)から、代表的な品目を取り上げてみました。
「ウイスキー」の支出金額全国一の札幌市
札幌市の2019〜2021年平均のウイスキーの1世帯当たりの年間支出金額は3,794円で、全国平均(2,165円)の約1.8倍となっています。
北海道はウイスキーの本場であるスコットランドに近い気候なため、良質なウイスキーの製造に適しているそうです。

「たこ」の支出金額全国一の大阪市
大阪市の2019〜2021年平均のたこの1世帯当たりの年間支出金額は1,911円で、全国平均(1,324円)の約1.4倍となっています。
たこ焼きのイメージが強いですが、関西では半夏生にたこを食する習慣があることも影響しているようです。

「他の野菜・海藻のつくだ煮」の支出金額全国一の熊本市
熊本市の2019〜2021年平均の他の野菜・海藻のつくだ煮(海苔のつくだ煮など)の1世帯当たりの年間支出金額は653円で、全国平均(398円)の約1.6倍となっています。
熊本県は、阿蘇山や九州山地からの豊かな河川水が流れ込む有明海と八代海を漁場に海苔の養殖が盛んで、全国有数の海苔の生産量を誇ります。

下の表は、2019〜2021年平均の品目別「年間支出金額」又は「年間購入数量」が、全国で上位(青の太字は1位)である主な品目(食料)について、それぞれの地域の特徴を踏まえ、まとめたものです。
都道府県庁所在市 |
品目 |
---|---|
札幌市 | 他の生鮮肉(羊肉など)、たまねぎ、ビール、ウイスキー |
青森市 | いか、ほたて貝、さけ |
盛岡市 | さんま、中華麺、わかめ |
仙台市 | かまぼこ、わかめ、かき(貝) |
秋田市 | 生しいたけ、だいこん漬、ほうれんそう |
山形市 | こんにゃく、他の果物(さくらんぼ、洋梨など)、中華そば(外食) |
福島市 | 納豆、桃、卵 |
水戸市 | メロン、せんべい、しじみ |
宇都宮市 | だいこん、ぎょうざ、いちご |
前橋市 | すし(弁当)、ドレッシング、乳酸菌飲料 |
さいたま市 | チューハイ・カクテル、プリン、パスタ |
千葉市 | ブロッコリー、トマト、レタス |
東京都区部 | チーズ、ワイン、サラダ |
横浜市 | かぼちゃ、しゅうまい、紅茶 |
新潟市 | 塩さけ、さやまめ、天ぷら・フライ |
富山市 | ぶり、オレンジ、もち |
金沢市 | ケーキ、アイスクリーム・シャーベット、れんこん |
福井市 | 油揚げ・がんもどき、コロッケ、カツレツ |
甲府市 | ぶどう、まぐろ、干しあじ |
長野市 | 小麦粉、みそ、りんご |
岐阜市 | 柿、和食(外食)、喫茶代 |
静岡市 | まぐろ、しらす干し、じゃがいも、緑茶 |
名古屋市 | すいか、和食(外食)、喫茶代 |
津市 | あさり、魚介のつくだ煮 |
大津市 | かぼちゃ、魚介のつくだ煮、牛肉 |
京都市 | コーヒー、他の野菜の漬物(千枚漬など)、バナナ |
大阪市 | たこ、乳飲料、はくさい |
神戸市 | マーガリン、食パン、キウイフルーツ |
奈良市 | 牛肉、食用油、生しいたけ |
和歌山市 | 梅干し、みかん、さば |
鳥取市 | いわし、かれい、かに、梨 |
松江市 | しじみ、さば、梨 |
岡山市 | ぶどう、桃、ソース |
広島市 | かき(貝)、ソース、バナナ |
山口市 | しめじ、ふりかけ、あじ |
徳島市 | さつまいも、ハンバーガー、ちくわ |
高松市 | 生うどん・そば、日本そば・うどん(外食) |
松山市 | ちくわ、たい、えび |
高知市 | かつお、はくさい漬、飲酒代 |
福岡市 | たらこ、鶏肉、風味調味料 |
佐賀市 | たい、ごぼう、れんこん、干しのり |
長崎市 | あじ、みかん、カステラ |
熊本市 | すいか、合いびき肉、他の野菜・海藻のつくだ煮 |
大分市 | 干ししいたけ、チョコレート菓子、酢 |
宮崎市 | 焼酎、ぎょうざ、鶏肉 |
鹿児島市 | 揚げかまぼこ、酢、焼酎 |
那覇市 | かつお節・削り節、にんじん、ハンバーグ |
政令指定都市 |
品目 |
---|---|
川崎市 | おにぎり・その他、サラダ、パスタ |
相模原市 | レタス、もち、豚肉 |
浜松市 | 豆腐、ぎょうざ、緑茶 |
堺市 | はくさい、えび、たこ |
北九州市 | いわし、さしみ盛合わせ、たらこ |
2. 最近の特徴的な支出
最近の家計消費の動き
消消費支出は2年ぶりの実質増加
二人以上の世帯(平均世帯人員2.93人、世帯主の平均年齢60.1歳)の消費支出は、1世帯当たり1か月平均279,024円で、前年に比べ名目0.4%の増加となり、物価変動(-0.3%)の影響を除いた実質でも0.7%の増加となりました。新型コロナウイルス感染症の影響がない2019年と比べると、消費支出は、名目4.9%、実質4.6%の減少となりました。
月別にみると、3月から5月までは、前年の消費が低水準だった反動などで増加となりました。特に、4月及び5月は、前年に初めて緊急事態宣言が発出されたことにより「外食」や「教養娯楽サービス」が低水準だった反動などもあり、増加となりました。消費支出は、それぞれ実質13.9%、12.5%の増加となり、他の月に比べ増加幅が大きくなりました。
10月は、緊急事態宣言が解除され、外出機会が増加したことから「交通」などが増加した一方、「家庭用耐久財」が前年に増加していた反動などで減少となり、消費支出は実質0.6%の減少とおおむね横ばいとなりました。11月は、引き続き「交通」などが増加した一方、巣ごもり需要の縮小などにより「食料」などが減少となり消費支出は実質1.3%の減少となりました。12月も同様の傾向から「外食」などが増加した一方で、「教養娯楽用耐久財」などが減少となり、消費支出は実質0.2%の減少とおおむね横ばいとなりました。
図 3-1 消費支出の対前年同月増減率(二人以上の世帯)

統計豆知識 〜名目と実質〜
「名目」とは額面どおりの金額で、普段私たちがスーパーなどで目にしている金額そのものです。一方、「実質」とは、物価の変動の影響を取り除いたものです。
支出金額の名目増減率は、支払った金額の動きを示し、実質増減率は、支払った金額(名目)から消費者物価指数の変化分を取り除いた実質的な金額の動きを示します。実質増減率は、数量や品質の変化分に当たります。
2021年における主な品目別の動き
「さんま」の1か月当たりの支出金額を月別にみると、2019年、2020年と記録的な不漁で水揚げ量の減少が続いていることから、2018年と比べて8〜10月は減少しています。また、2021年8〜10月についても2018年と比べて引き続き減少となりました。
図 3-2-1 月別支出金額の推移(二人以上の世帯)

「たまねぎ」についてみると、10〜12月は天候不順などによる価格高騰の影響などにより2020年と比べて増加となりました。
図 3-2-2 月別支出金額の推移(二人以上の世帯)

「宿泊料」についてみると、2021年は、新型コロナウイルス感染症の影響がない2019年と比べ大きく減少しているものの、2021年10月以降、緊急事態宣言の解除や新型コロナウイルスの感染者数の減少などにより外出機会が増えたことで、前年同月に比べ、増加となりました。
図 3-2-3 月別支出金額の推移(二人以上の世帯)

「たばこ」についてみると、2020年に引き続き10月にたばこ税の税率が1本当たり1円引き上げられ、各銘柄が値上がりした影響から、値上がり直前の9月は駆け込み需要により、他の月と比べ、増加となりました。一方、10月は駆け込み需要の反動により減少となりました。
図 3-2-4 月別支出金額の推移(二人以上の世帯)

3. あの日には欠かせない この日には欲しい この品目
特定の日に購入が集中する「チョコレート」と「ケーキ」
1年の中で特定の日に購入が特に多くなる品目があります。
2021年2月の「チョコレート」の支出金額を日別にみると、月前半は増減を繰り返しながらバレンタインデー直前にピークを迎え、バレンタインデーを過ぎた後は一定の水準で推移しています。少し余裕をもってチョコレートを購入する世帯もいる一方、バレンタインデー直前に購入する世帯も多いようです。
2021年12月の「ケーキ」の支出金額を日別にみると、12月24日のクリスマス・イブに最も多くなっており、次いで25日、23日の順になっています。特に、12月全体の支出の3割弱(25.9%)が12月24日に集中しており、クリスマスパーティーは、やはりクリスマス・イブに行うのが一番人気のようです。
図 3-3 1世帯当たり1日当たりの支出金額(二人以上の世帯)


4. 変わる季節性
購入時期が早まる「通学用かばん」
商品の中には、消費者が購入する時期が、昔とは異なってきているものがあります。
「通学用かばん」の支出金額は、10年前は年末から年明けにかけて多くなっていました。5年前は夏頃から徐々に多くなる傾向がみられ8月に最も多くなっていました。最近では春から初夏にかけて多くなってきているなど、購入時期が大きく変化しています。
最近は、ランドセルメーカーや小売店が、祖父母が孫のために購入する需要を見込んで、親が子を連れて帰省する夏休みシーズンや4、5月のゴールデンウィークを狙い、春頃から翌年用のランドセルの新商品の販売を開始するようになりました。また、ランドセルの色や素材は多種類から選べるようになり、人気ブランドやデザインによっては、早々に売り切れることも珍しくないため、購入時期が早まる傾向にあるようです。
図 3-4 通学用かばんの月別支出金額(二人以上の世帯)

注1 2019年4月から2022年3月までの月ごとの平均。
注2 2014年4月から2017年3月までの月ごとの平均。
注3 2009年4月から2012年3月までの月ごとの平均。