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第3章 家計からわかる暮らしの特徴
家計支出の内容は,住んでいる地域によって違ったり,暮らしぶりの変化に伴い変わります。ここでは,家計からわかる暮らしの特徴を取り上げてみます。
1. 食生活から垣間見える土地柄
消費者の食生活には土地柄によって特徴が表れます。
都道府県庁所在市及び政令指定都市別の結果(二人以上の世帯)から,代表的な品目を取り上げてみました。
「わかめ」の支出金額全国一の盛岡市
三陸沖(青森県,岩手県,宮城県をまたぐ太平洋沿岸地域)では,わかめの養殖が盛んです。
盛岡市の平成27〜29年平均のわかめの1世帯当たりの年間支出金額は2,884円で,全国平均(1,534円)の1.9倍となっています。

「アイスクリーム・シャーベット」の
支出金額全国一の金沢市
金沢市の平成27〜29年平均のアイスクリーム・シャーベットの1世帯当たりの年間支出金額は11,324円で,全国平均(8,888円)の1.3倍となっています。
一説によれば,加賀藩時代から根づいている和菓子をはじめとしたスイーツ好きな土地柄なんだそうです。

「すいか」の支出金額全国一の熊本市
すいかは,リコピンが多く含まれており,血糖値を下げる,動脈硬化の予防,美白効果など美容と健康に良い効果があると言われており,熊本県で生産が盛んです。
熊本市の平成27〜29年平均のすいかの1世帯当たりの年間支出金額は2,471円で,全国平均(1,362円)の1.8倍となっています。
下の表は,平成27〜29年平均の品目別「年間支出金額」又は「年間購入数量」が,全国で上位(青の太字は1位)である主な品目(食料)について,それぞれの地域の特徴を踏まえ,まとめたものです。
都道府県庁所在市 |
品目 |
---|---|
札幌市 | たまねぎ,ビール,他の生鮮肉(羊肉など) |
青森市 | さけ,ほたて貝,いか,カップ麺 |
盛岡市 | 中華麺,わかめ,つゆ・たれ |
仙台市 | かまぼこ,魚肉練製品,ごぼう |
秋田市 | だいこん漬,ほうれんそう,生しいたけ |
山形市 | こんにゃく,中華そば(外食),他の果物(さくらんぼ,洋梨など) |
福島市 | 桃,納豆,きゅうり |
水戸市 | メロン,せんべい,しじみ |
宇都宮市 | いちご,せんべい,ぎょうざ |
前橋市 | グレープフルーツ,きゅうり,乳酸菌飲料 |
さいたま市 | ピーマン,スパゲッティ,ドレッシング |
千葉市 | キウイフルーツ,レタス,干しのり |
東京都区部 | ワイン,チーズ,サラダ |
横浜市 | しゅうまい,レタス,紅茶 |
新潟市 | 清酒,さやまめ,塩さけ |
富山市 | ぶり,もち,オレンジ |
金沢市 | れんこん,アイスクリーム・シャーベット,ケーキ |
福井市 | 油揚げ・がんもどき,カツレツ,コロッケ |
甲府市 | ぶどう,あさり,まぐろ |
長野市 | 小麦粉,みそ,調理パン |
岐阜市 | 柿,喫茶代,和食(外食) |
静岡市 | 緑茶,まぐろ,しらす干し,じゃがいも |
名古屋市 | 和食(外食),喫茶代,オレンジ |
津市 | 魚介のつくだ煮,えび |
大津市 | キャンデー,こんぶつくだ煮 |
京都市 | なす,牛肉,コーヒー,パン |
大阪市 | たこ,はくさい,すし(弁当) |
神戸市 | 食パン,紅茶,中華食(外食) |
奈良市 | 牛乳,たこ,柿 |
和歌山市 | 梅干し,えび,牛肉 |
鳥取市 | 梨,かに,かれい,いわし |
松江市 | しじみ,さば,あじ |
岡山市 | ソース,ぶどう,桃 |
広島市 | かき(貝),バナナ,ソース |
山口市 | あじ,ふりかけ,食用油 |
徳島市 | さつまいも,ちくわ,スポーツドリンク |
高松市 | 生うどん・そば,日本そば・うどん(外食) |
松山市 | みかん,他の柑きつ類(伊予柑,不知火など),牛肉 |
高知市 | かつお,他の柑きつ類(柚,文旦など),飲酒代 |
福岡市 | たらこ,鶏肉 |
佐賀市 | れんこん,ごぼう,干しのり |
長崎市 | カステラ,みかん,あじ |
熊本市 | 他の生鮮肉(馬肉など),すいか |
大分市 | あさり,干ししいたけ,鶏肉 |
宮崎市 | 焼酎,干ししいたけ,さば |
鹿児島市 | 揚げかまぼこ,酢,焼酎 |
那覇市 | かつお節・削り節,にんじん,ハンバーガー |
政令指定都市 |
品目 |
---|---|
川崎市 | 乾燥スープ,おにぎり・その他,調理パン |
相模原市 | ハム,レタス,豚肉 |
浜松市 | うなぎのかば焼き,ぎょうざ,緑茶 |
堺市 | はくさい,食パン,たまねぎ |
北九州市 | いわし,さしみ盛合わせ,たらこ |
2. 最近の特徴的な支出
最近の家計消費の動き
消費支出は弱い動き
二人以上の世帯の消費支出についてみると,平成29年は,前年に比べ名目0.3%の増加となりました。また,物価変動(0.6%)の影響を除いた実質では0.3%の減少となり,前年(−1.7%)から減少幅は縮小しているものの,消費支出は依然弱い動きとなっています。
月別にみると,1月〜4月は,保健医療サービスや魚介類が減少したことなどから,消費支出は減少となりました。特に2月は前年がうるう年で,1日少なかった影響もあり,外食を含む食料などが減少となりました。
5月〜8月は軽自動車の燃費不正問題が一巡したことなどの影響で,自動車等関連費が増加となりました。また,6月は住宅リフォームなどの「設備修繕・維持」も増加となりました。
9月は3連休に台風が接近・上陸し,10月も週末に台風が2回通過した影響を受け,9月の消費支出は実質0.3%の減少,10月は実質で前年と同水準となりました。
11月は北海道を除き,気温が低めだったことから被服及び履物や,価格が前年より安くなった生鮮野菜が増加しました。
図 3-1 消費支出の対前年同月増減率(二人以上の世帯)

統計豆知識 〜名目と実質〜
「名目」とは額面どおりの金額で,普段私たちがスーパーなどで目にしている金額そのものです。一方,「実質」とは,物価の変動の影響を取り除いたものです。
支出金額の名目増減率は,支払った金額の動きを示し,実質増減率は,支払った金額(名目)から消費者物価指数の変化分を取り除いた実質的な金額の動きを示します。実質増減率は,数量や品質の変化分に当たります。
平成29年における主な品目別の動き
さんまの1か月当たりの支出金額と購入数量を月別にみると,記録的な不漁の影響から値上がりし購入量が減少したため,前年同月に比べ,支出金額及び購入数量が,旬である9月〜11月で大幅な減少となりました。
図 3-2-1 月別支出金額及び購入数量の対前年同月増減率の推移
(二人以上の世帯)(平成29年)

鶏肉についてみると,低価格で健康に良いイメージなどからムネ肉の人気が高まり,前年同月と比べ2月を除いた全ての月で増加となりました。
図 3-2-2 月別支出金額の推移(二人以上の世帯)

統計豆知識 〜消費者物価指数(CPI)〜
消費者物価指数は,全国の世帯が日常生活で購入する商品(財・サービス)の価格の動きを総合して見るために指標化したものです。物価の変化を客観的に表すひとつの指標として多方面で利用されています。
発泡酒・ビール風アルコール飲料についてみると,5月は6月の酒税法改正前の駆け込み需要による増加が見られ,その後の反動で6月は前年同月に比べ減少となりました。
図 3-2-3 月別支出金額の推移(二人以上の世帯)

テレビゲーム機についてみると,3月に発売した「ニンテンドースイッチ」のヒットの影響から,3月〜12月の支出金額が前年同月に比べ増加となりました。
図 3-2-4 月別支出金額の推移(二人以上の世帯)

3. あの日には欠かせない この日には欲しい この品目
特定の日に購入が集中する「いわし」と「ワイン」
1年の中でも特定の日に購入が特に多くなる商品があります。
いわしの支出金額は,「節分」(2月3日)が最も多く,平成29年は,年間を通じた1日当たりの平均支出金額の8倍になっています。主に西日本では,節分にいわしを食べたり,頭の部分を柊の小枝に刺し,「魔除け」として軒先などに飾る習慣があります。
ワインの支出金額は,11月の第3木曜日のボジョレー・ヌーボー解禁日(平成29年は11月16日)に年間を通じた1日当たりの平均支出金額の約4倍になっています。
図 3-3 1世帯当たり1日当たりの支出金額(二人以上の世帯)

4. 変わる季節性
購入時期が早まる通学用かばん
商品のなかには,消費者が購入する時期が,昔とは異なってきているものがあります。
通学用かばんの支出金額は,10年前は年明け以降の1〜3月にかけて多くなっていました。しかし,最近では8月が最も多く,次いで7月となっており,購入時期が大きく変化しています。
最近は,ランドセルメーカーや小売店が,祖父母が孫のために購入する需要を見込んで,親が子を連れて帰省するお盆シーズンを狙い,夏前からランドセルの新商品の販売を開始するようになりました。また,ランドセルの色や素材は多種類から選べるようになり,人気ブランドやデザインによっては,早々に売り切れることも珍しくないため,購入時期が早まる傾向にあるようです。
図 3-4 通学用かばんの月別支出金額(二人以上の世帯)

注1 平成27年4月から30年3月までの月ごとの平均。
注2 平成17年4月から20年3月までの月ごとの平均。