社会経済や経済の動向等を把握する際は、官公庁や民間などから発表される経済統計データが用いられています。
このような経済指標や時系列データ(※1)のうち、月や四半期のデータの動きをみると、一年を通して決まった動き(一年を周期とした変動)がみられます。このような動きは、季節変動と呼ばれています。季節変動が含まれるデータを分析する際には、季節変動を取り除くことが必要になる場合があります。このとき、何も手を加えない元のデータ(原数値)から季節変動を取り除く季節調整という統計的な手法が使われています。
それでは、季節変動はなぜみられるのかというと、世の中のモノの動きには天候や社会習慣等に起因する以下のような季節的な要因(季節要因)が含まれているためです。
《季節要因》
図1は、年次別に1世帯当たりの家計の消費支出(※2)から1か月の日数や物価水準の変動の影響を取り除いて計算した指数(消費水準指数)の月別の動きを示したものです。この指数が高い場合、家計での支出が多いことを表しています。
これをみると、消費水準指数はボーナスが支給される時期に重なる12月が最も高く、他にも3月や4月が高くなっています。一方で、5月や6月は低くなっているなど、1年を通じて一定の変動パターン(季節変動)があることがあることが分かります。
例えば、一年の中で消費支出が低くなる5月や6月と最も高くなる12月の支出金額を単純に比較しても、5月や6月よりも12月の方が家計の消費が活発であったと判断することはできません。これは、支出金額は5月や6月が少なく、12月が多いことは季節的に当然であるためです。
このような季節要因により、経済指標や時系列データを分析する際は、単純にデータの推移をみて動向を判断しても、分析の目的によっては有効な結論を得ることができない場合があります(※3)。
そこで必要となるのが、原数値から季節要因による変動を除く「季節調整」と呼ばれる手法です(原数値から季節変動を除いた値を季節調整値といいます。)。
季節調整にはいくつかの方法がありますが、日本では移動平均(※4)の考え方を使った統計的な手法(センサス局法(※5))が広く使われています。季節調整値は、季節要因による変動が除かれているため、当月と前月や前々月などとの比較が可能となり、直近の動向を確認することができることなど、精度の高い比較・分析が可能となります(図2)。
ここまでを読むと、原数値よりも季節調整値の方が有用で、原数値はあまり使われないかと思ってしまう人もいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。例えば、企業では、消費の需要に季節性がある場合、季節性を含んだデータを基に商品の生産量を決めたりします。また、行政機関では、失業者(職を探している人)に対する失業対策を考えるときは、実際にどの程度の失業者が存在しているのかを把握したり、失業者が増加する時期を踏まえて対策を講じるためです。
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