長尾 篤志 氏(文部科学省初等中等教育局視学官)


※「統計調査ニュース 平成25年7月号」より抜粋

 高等学校では,新学習指導要領に基づき数学と理科が昨年度(平成24年度)から他教科に先駆けて学年進行で実施されています。数学科では,必履修科目数学Tに「データの分析」という統計的な内容が含まれています。現場の先生方に「データの分析」について聞くと「どのように指導すればよいか分からず苦慮している」と言う返事が多くの場合,返ってきます。数学の教師で学生時代に統計をしっかり勉強したという人はあまり多くないと思いますし,高校生の頃も統計的な内容は授業で扱われないことが多かったと思いますので,先生方の反応は不思議ではありません。ここでは,統計的な内容を学習する意義とその指導について考えてみましょう。
 ビッグデータ時代と言われる今日,データから傾向を把握し,それに基づいて意思決定を行うことは多くの組織で行われていることです。したがって,これからの社会を生きる高校生にとってこのような知識や技能を身に付けておくことは必須のことと考えられます。このような実際的な学習意義がまず考えられます。また,データに基づいて自分の考えをまとめ発表したり,質疑応答をしたりすることは思考力や表現力を育てることになります。さらに,自分が関心や興味をもっている事柄を探究するため,必要なデータを集め,傾向を分析し,必要ならより進んだ知識等を参考にしつつ自分の考えをまとめ発信したりすることは,正に新学習指導要領の言う「確かな学力」を育てることと同一線上にあると言えます。そのほかにも,高等学校の数学科では,学習する事柄がどこで役立つのか分かりにくいとよく指摘されますが,統計的な内容についてはそのようなことがなく,数学学習に対する意識の改善や関心・意欲を高めることなどにもつながるのではない か,と思われます。
 ただ,ここで述べたことは指導の在り方を含めて考える必要があります。例えば,平均や分散,標準偏差などの知識があってもそれらの知識は適切に使われなければ意味はありません。これらの知識が適切に使われるためには,それらの知識の意味理解をきちんとすること,これらの知識を使う場面を設けてどのように使うかを実際に経験することが必要です。知識を使う場面では,コンピュータを使うことや,グループで議論する場面を取り入れることも大切だと思います。また,知識を使う場面は数学の授業で閉じるのではなく,他教科や総合的な学習の時間などでも大いに知識を活用していただきたいと考えています。それが更に理解を深めることにつながると考えます。


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