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統計Today No.104
ビッグデータ時代のデータサイエンス
〜「社会人のためのデータサイエンス演習」受講者募集開始〜
総務省統計局統計情報システム課長 阿向 泰二郎
人口減少、少子高齢化が世界に先駆けて進行し、多くの分野で課題を抱える我が国は「課題先進国」と言われ、眼前に迫る課題に世界に先んじて取り組まなければならない機会と経験は、試練でもあると同時に、世界に貢献し、世界をリードする好機になるとも言われています。
その課題解決の重要な鍵を握る一つとして考えられているのがICT(情報通信技術)であり、コンピュータ同士はもちろんのこと、あらゆるものがインターネットとつながっていく(IoT:Internet of Things)中で、多種多様で膨大な情報「ビッグデータ」が生成され、その活用に期待と注目が寄せられています。
政府の情報通信技術戦略である「世界最先端IT国家創造宣言」でも、「IoT時代の到来を踏まえ、ビッグデータを利活用した新たなビジネスモデルの構築など、産業が有する潜在能力を強化し、新たな雇用を創出し、成長する社会を実現する」と定め、産業競争力の強化、雇用創出、経済成長の原動力としてビッグデータの利活用を掲げています。
公的統計データは、これまでも国民共有の情報資産として、行政のみならず広く国民の皆様に利用いただいていますが、総務省及び独立行政法人統計センターでは、ビッグデータ時代を迎える中で、企業や業界の垣根を越え、誰もが自由に利用できるオープンデータとして、各府省と連携し、500種類に及ぶ全ての公的統計の公開と、マシンリーダブル(機械可読)なデータ提供を積極的に進め、企業の経済活動、地域の活性化・まちづくりを側面からサポートしています。
他方で、こうした公的統計データや企業が蓄積するビッグデータを、統計学などを使って行政やビジネスに役立てる「データサイエンス」に関心が寄せられており、様々なデータから企業や地域が目指す目標の達成状況との関連性をひもとき、効果の最大化・最適化をもたらす投資や施策を導き出そうと、一部には、「データサイエンティスト」と呼ばれるデータ分析の専門家を戦略的に雇用・育成する動きもあります。
政府が提供する公的統計データも、企業や地域の中で存分に活用いただく上で必要となるのは「データサイエンス」の力です。平均、分散、相関係数、回帰分析といった基礎統計学の手法、統計量、グラフを利用するだけでも、数字の羅列・塊でしかなかったデータの中から、社会、経済、産業の現況や動向を読み解くことができるようになります。
データ・ドリブンイノベーションのイメージ図
統計学を使った基礎的な分析は、中学・高校の数学知識があれば習得可能なものですので、誰しも「データサイエンス」の力を高める素地が備わっていると言えると思います。こうした「データサイエンス」力のある人材が広く企業や地域に広がっていくことは、ICTが世界中に普及・進展していく中で、国際競争力を持ち、経済成長を支える日本の底力ともなってくることでしょう。
総務省統計局及び統計研修所では、政府として初めて、「社会人のためのデータサイエンス」を、MOOC(ムーク)※と呼ばれる公開型オンライン講座のプラットフォームを用い、誰でも無料で統計学等を学べるデータサイエンス・オンライン講座を提供しました。昨年春・秋の2回にわたって提供した入門講座では、延べ2万3千人を超える受講の参加がありました。
今春、第2弾となる「社会人のためのデータサイエンス演習」を新たに開講し、ビジネスの現場で求められているデータサイエンスを分かりやすく解説します。
「社会人のためのデータサイエンス演習」の紹介画像
新講座では、受講者の皆さんに実際にデータを使ってもらい、また、具体的にパソコンを使って分析してもらう、体験型の演習を中心に講座を構成しています。講師陣には、ビジネスの現場で実際にデータ分析を行っているデータサイエンティストや、先端的な研究を行っている研究者の方々に加わってもらい、記述統計の基礎や分布による現状把握と比較の方法、クロス集計の見方、散布図と相関、回帰分析による予測などを、現場目線で、具体的なデータを使いながら解説していただきます。
「社会人のためのデータサイエンス演習」講義資料抜粋
本講座を受講いただくことで、ビジネスや行政の実務にそのまま適用と応用ができる、データ分析の即戦力を身につけていただけるものと思います。皆様の学びをサポートする能力開発、人材育成のツールとして、是非、この機会に御利用いただき、行政、ビジネスに役立てていただければ幸いです。
※ MOOC:Massive Open Online Courses
(平成28年1月29日)