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統計Today No.91

消費者物価指数(CPI)から見た石油製品及び輸入品の
価格動向と原油相場、為替相場との関係について

総務省統計局統計調査部消費統計課物価統計室長 上田 聖    
(共同執筆者)                                        
同室物価指数第二係長 山下 哲一


はじめに

 2014年の夏以降、円・ドルの為替相場が円安に動く一方、原油相場が大きく値下がりしました(図1)。その結果、消費者物価指数(以下「CPI」という。)石油製品指数の動きは2014年7月の127.4をピークに直近の2015年1月には109.8と、6か月で17.6ポイントという下落を記録しています。
 逆に、値上げに関しては、円安の影響により輸入品を中心とした価格の上昇が報道されています。

※ 石油製品指数とはガソリン、灯油、プロパンガスの合成指数のこと。


図1 為替相場と原油相場の推移


 本稿では、原油相場と為替相場に影響されるCPIの「石油製品」と、特にCPIの算定において輸入品を指定して価格調査を行っている12品目の動向について、私見を交えて報告させていただきます。


原油相場、為替相場とCPI石油製品指数の関係

 最近のドル建て原油相場の月平均値は、2014年6月をピークにして、それ以降大きく下落しており、この動きはCPI石油製品指数を下げる方向に働いています。一方で、円・ドルの為替相場の月平均値は、2014年5月以降、円安の動きをとっており、この動きはCPI石油製品指数を押し上げる方向に働いています。
 両者の影響を合成した円建て原油相場の動きとCPI石油製品指数の動きを比較すると、おおむね連動して動いている様子がよく分かります(図2)。また、円建て原油相場の変動係数とCPI石油製品指数の変動係数比はおおむね10:4なので、円建て原油相場が10%変化すれば、それに連動してCPI石油製品指数が4%程度変化していることがうかがえます。


図2 円建て原油相場とCPI石油製品指数の推移


 さて、円建て原油相場とCPI石油製品指数の連動のタイムラグはどの程度なのでしょうか。2000年以降の円建て原油相場とCPI石油製品指数をタイムラグの期間ごとに相関係数をとったものが図3です。この結果を見ると、タイムラグ1か月で相関が最大となっており、円建て原油相場の動きは、翌月にガソリンの小売価格に反映されていることが分かります。


図3 タイムラグ別の円建て原油相場とCPI石油製品指数の相関係数

相関係数は1か月の0.983をピークに、タイムラグが大きくなるほど小さくなっている。


図4 タイムラグ1か月の円建て原油相場とCPI石油製品指数の関係

図形は右肩上がりのほぼ直線となっている。


 タイムラグ1か月で、円建て原油相場を横軸、CPI石油製品指数を縦軸にとったものが図4です。両者にはほぼ直線の関係が見られるため、表1に表される関係(回帰式モデル)を仮定して両者の関係を決定するパラメータα及びβを2000年以降のデータによって推定しました。


表1 仮定した回帰式モデル

回帰モデル式【CPI石油製品指数(t+1)=α×円建て原油相場(t)+β+ε】 αは円建て原油相場(円/バレル)が1円上昇すると1か月後にCPI石油製品指数が何ポイント上昇するかを示す係数(推定値0.0055)。βは円建て原油価格が0円となった場合に1か月後にCPI石油製品指数がとる値(推定値61.8)。揮発税や加工・輸送・販売コストなどがあるため円建て原油価格が0となっても0にならない。εはコストや企業戦略により変動する値。α×【円建て原油相場】、βでは説明できない毎月の値の残差。なお、tは時間(月)を示すインデックス


 このモデルを前提に、CPI石油製品指数の最近のピークである2014年7月の127.4から直近(2015年1月)109.8へと17.6ポイント下落した影響を分解すると表2となります。


表2 CPI石油製品指数の変化の寄与度分解

ドル建て原油相場下落の影響がマイナス29.5ポイント、円安の影響がプラス8.5ポイント、残差の影響(コスト変動・企業戦略)がプラス3.4ポイント


 この結果、ドル建て原油相場の下落分の約40.4%が円安と残差(コスト変動・企業戦略要因等)の影響によって相殺されていることが分かります。


為替相場とCPI輸入品指数の関係

 CPIの調査品目は、売れ筋の仕様を指定してそれに該当する商品・サービスを調査しているため、多くの調査品目では調査されたものが輸入品かどうかは基本的に分かりません。しかし、(1)輸入品が一定のシェアを占めていて品目として独立させているもの、(2)国産品と合わせても輸入品が売れ筋と判断しているもの、の計12品目(えび、牛肉B、チーズ(輸入品)、オレンジ、レモン、バナナ、果物缶詰、ワイン(輸入品)、小型乗用車(輸入品)、普通乗用車(輸入品)、ハンドバッグ(輸入品)、たばこ(輸入品))は調査品目に輸入品を指定しています。
 この12品目のCPI合成指数(以下「CPI輸入品指数」という。)と為替相場の前年同月比の動きを同じスケーリングで表したものが図5、スケーリングを変えて表したものが図6です。図5からは為替相場の変動の大きさに比べ、CPI輸入品指数の変動の大きさが小さいことが分かります。両者の前年同月比の標準偏差を計算すると、為替相場σ=10.2、CPI輸入品指数σ=3.3であることから、為替相場の変動の約3割が小売の価格変動に現れていることを示していると推察されます。
 また、図6を見るとタイムラグをもって連動性があるように見えます。


図5 為替相場とCPI輸入品指数の前年同月比の推移(同スケール)


図6 為替相場とCPI輸入品指数の前年同月比の推移(別スケール)


 為替相場とCPI輸入品指数の連動のタイムラグはどの程度なのでしょうか。為替相場とCPI輸入品指数の間でタイムラグの期間ごとに相関係数をとったものが図7です。この結果を見ると、タイムラグ10か月から12か月で相関が山を迎えており(11か月が最大値で0.77)、為替相場の変動は、10〜12か月程度遅れてCPI輸入品指数に反映されていることが分かります。


図7 タイムラグ別の為替相場とCPI輸入品指数の相関係数

相関係数は11か月の0.7657をピークに、山なりになっている。


おわりに

 これまで、CPI石油製品指数と原油相場、為替相場の関係、CPI輸入品指数と為替相場の関係をお示ししました。
 現在も原油相場や為替相場は日々動いており、今後もタイムラグをもって価格転嫁されて私たちの生活に影響してくることでしょう。このような国際動向の中で、CPIは金融政策の目標指標として非常に注目されています。総務省統計局では、しっかりとした調査を行い正確なCPIを作成・提供するとともに、分かりやすく分析を行い、その情報の発信に今後も努めてまいります。



<参考資料>
 為替相場:日本銀行より http://www.boj.or.jp/statistics/index.htm/別ウィンドウで開きます。
 ドバイ原油価格:IMF Primary Commodity Pricesより http://www.imf.org/external/np/res/commod/index.aspx別ウィンドウで開きます。


(平成27年3月10日)


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