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統計Today No.74
高まる高齢者の就業率
−労働力調査・平成25年平均結果から−
総務省統計局統計調査部国勢統計課労働力人口統計室長 河野 好行
我が国の総人口は、平成25年(2013年)10月1日現在(概算値)、1億2730万人で、うち65歳以上人口は3190万人と過去最高を更新しています。総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)も25.1%と、4人に1人が高齢者となっており、我が国は世界のどの国も経験したことのない高齢社会を迎えています。また、「団塊の世代(1947年から1949年までに生まれた人)」が平成24年(2012年)から65歳を迎えており、我が国の総人口が減少局面に入った中でも、高齢化率は更に上昇し続けるものと思われます。
このような状況下でも、多くの働く高齢者が増えていけば、日本の経済成長にも寄与できるとともに、ひいては社会保障も安定していくことになります。そのため、高齢者がより長く働ける社会の実現に向けて、その活躍の場を確保していくことが必要となってきています。
そこで、多くの高齢者が定年を迎える中で、これまでどのような働き手として経済社会を支えてきたのか、また、これからも働き手として活躍されるのかについて、労働力調査(基本集計)の平成25年平均結果を用いて概観します。
「60〜64歳」の就業率(58.9%)は10年前(50.7%)と比べて8.2ポイント上昇しました。
就業率の推移を過去10年間の時系列でみると、「60〜64歳」の就業率は、平成15年の50.7%から25年58.9%と、8.2ポイント上昇しました。これは、継続雇用の促進などを盛り込んだ改正高年齢者雇用安定法(平成18年4月施行)(注)の後押しなどにより、19年に55.5%(前年と比べ2.9ポイント上昇)、20年に57.2%(前年と比べ1.7ポイント上昇)と上昇し、21年には15歳以上全体の就業率を逆転しました。
なお、15歳以上の就業率は平成15年57.6%から25年56.9%と、少子高齢化の進展を背景に0.7ポイント低下しました。(図1)
(注) 同法の改正において、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止のいずれかを選んで実施することが事業主に義務付けられた。
図1 「55〜59歳」及び「60〜64歳」の高齢者の就業率の推移(平成15年〜25年)
「60〜64歳」及び「65〜69歳」の就業者は5年前に比べて大きく増加しました。
高齢者の人口を年齢階級別にみると、平成25年では、「60〜64歳」が977万人、「65〜69歳」が861万人となっており、20年の「55〜59歳」(994万人)と「60〜64歳」(887万人)の人口規模がそのまま5年後も同規模の山となっていることが分かります。
平成25年の「60〜64歳」及び「65〜69歳」の就業者は、20年と比べて、それぞれ68万人の増加、45万人の増加となっています。これは、これらの人口階級の人口規模が大きくなっているとともに、これらの人口階級の就業率自体も上昇していることによるものです。(図2)
図2 高齢者(5歳階級別)の就業者、完全失業者及び非労働力人口(平成20年、25年)
「60〜64歳」の雇用者は60歳を境に正規雇用から非正規雇用への移行が明らかです。
同一世代で男女別に雇用形態の内訳がこの5年間でどのように変化したかをみると、男性雇用者(役員を除く)に占める正規の職員・従業員の割合は、平成20年の「55〜59歳」では86.6%でしたが、25年の「60〜64歳」では45.5%と、その割合が約半分に低下しています。
男性「60〜64歳」の非正規の職員・従業員を雇用形態の内訳でみると、平成25年は「契約社員・嘱託」が32.2%と、20年の「55〜59歳」の「契約社員・嘱託」と比べると26.6ポイントの上昇となっており、「60〜64歳」の男性雇用者全体の3割強を占めています。「60〜64歳」の男性雇用者は、60歳を境に「契約社員・嘱託」などに雇用形態を移行して引き続き働いていることがわかります。
一方、女性雇用者(役員を除く)に占める正規の職員・従業員の割合は、平成20年の「55〜59歳」では40.4%でしたが、25年の「60〜64歳」では24.9%と低下しています。
女性「60〜64歳」の非正規の職員・従業員を雇用形態の内訳でみると、平成25年は「パート・アルバイト」が60.1%と、20年の「55〜59歳」の「パート・アルバイト」と比べると11.2ポイントの上昇となっており、「60〜64歳」の女性雇用者全体の6割を占めています。(図3)
図3 男女・雇用形態別雇用者数の55〜59歳(平成20年)と60〜64歳(25年)の構成比の比較
我が国の15〜64歳の労働力人口は徐々に減少してきており、65歳を迎えている「団塊の世代」やこれに続く高齢者がこれからも健康で意欲を持ち続け社会を支える側に回って働ける社会、生涯現役社会を創り出していく必要があります。我が国では「団塊の世代」を含め高齢者の就業意欲は高く、今後どの程度の割合で働き続けることになるか、労働力調査の結果に注目いただきたいと思います。
今回紹介しました高齢者の就業状態の変化は、日本経済を活性化させる重要な一つの指標として注目を集めています。労働力調査では、このほか、我が国の喫緊の課題となっている「女性の雇用」、「若者の雇用」、「非正規雇用」など、様々な課題に対処するために必要な統計データを提供しています。こちらのURL(http://www.stat.go.jp/data/roudou/index.htm)からアクセスできますので、御活用いただければ幸甚です。
(平成26年3月20日)