日本の統計の中核機関

  • ご意見・お問合せ
  • サイトマップ
  • 文字サイズ等の変更
  • English

ホーム > インフォメーション > 広報資料 > 統計Today 一覧 > 統計Today No.71

ここから本文です。

統計Today No.71

「ワーク(work)の定義と未活用労働に関する新たな指標について」
−労働統計に関する国際的な動きから−

総務省統計局統計調査部長 會田 雅人


 我が国においては女性労働力の活用が今話題となっていますが、国際的には非正規も含めた雇用形態の多様化の状況などを踏まえ、労働力の十分な活用が行われているかという問題意識のもと、未活用労働について注目が集まっています。このような背景を踏まえ、労働統計について国際的な大きな動きがありましたので御紹介します。


国際労働統計家会議について

 2013年10月、スイス(ジュネーブ)においてILO(国際労働機関)が主催する第19回国際労働統計家会議が開催され、106の国・地域などから合計272名(日本からは3名)が出席しました。今回は、未活用労働に関する新たな指標が設定され、また「ワーク(work)」の定義が初めてなされるということで、労働統計を考える上で大きな意味を持つ決議の採択が行われました。従来の労働統計に関する決議は1982年に第13回国際労働統計家会議において採択されたものになりますので、約30年ぶりに採択されたことになります。
 ガイ・ライダーILO事務局長は、会議の冒頭において、「直近9月のG20サンクトペテルブルク・サミットでより良い労働市場情報の入手が求められたこと、そのため信頼できる労働統計データが不可欠であること、また、この会議で決議が予定されるワーク(work)の定義設定、更には失業率を補う『未活用労働(Labour Underutilizationの仮訳)』という考え方が重要であること」について言及しました。
 この背景としては、国際的に見てもパートタイム労働や非正規雇用の増加など、労働市場を取り巻く環境が多様化・複雑化することにより、従来の基準では労働市場に関わる人々を適切に計測しきれなくなってきたことがあります。また、従来は国民経済計算と労働統計の概念の整合性が確保できていない部分があったため、適切な労働生産性の推計を困難なものとしていました。これらの課題に対応するため、従来の労働統計に関する決議の内容を改善し、新たな決議が採択されました。


新決議の概要

 新決議の主な内容は以下の3つです。

 I. ワークについての定義設定
 II. 就業状態に関する人口の分類変更
 III. 未活用労働の計測

 以下、その概要を御紹介します。


I. ワークについての定義設定
 従来定義されていなかった「ワーク」について「あらゆる性別・年齢の人によって行われる、他人又は自分自身のために財・サービスを生産する活動」と明確に定義されました。これは、有給か無給かに関わらず「ワーク」と呼ぶこととしています。更にこの内訳として、次の表のとおり(1)自分自身のために行われるワーク、(2)他人のために行われる有給のワーク(=就業)、(3)他人のために行われる職業経験や技術を得るための無給のワーク、(4)他人のために行われる非強制的なワーク(=ボランティア)、(5)他人のために行われるその他のワーク(囚人による無給のワークなど)に区分されています。


ワークの内訳表



II. 就業状態に関する人口の分類変更
 次は、上で定義されたワークの一形態である「就業」という概念に基づき、人口が分類されます。従来は、「就業」という観点から就業者、失業者、非労働力人口の3つに分類されていましたが、今回の決議ではより詳しく「未活用労働」と呼ばれる労働の供給と需要が一致していない人についても概念が取り入れられました。具体的には、下の図のA、B、Cを合わせた概念です。

 A:就業者であるけれど、パートタイムなどで労働時間が不十分で追加的なワークを希望し追加就業可能な人
   (=Time-related underemployment)、
 B:就業しておらず、就業可能であり、求職している人(=失業者)、
 C:就業しておらず就業に興味はもっているものの、失業者の条件である求職活動と就業可能性のどちらか一方を満たしていない人
   (=Potential labour force)
 などが該当します。

就業状態に関する人口の分類変更図


 また、失業者の定義についても、いくつか変更がありました。(i)就業しておらず、かつ(ii)求職活動を行っており、かつ(iii)就業可能な者といういわゆる3条件に変更はなかったものの、「求職活動をしている期間」については、従前の決議では明示されていなかったものが「直近4週間又は1か月」に、また「就業可能である期間」については、従前1週間であったものが「各国の事情により先へ2週間を超えない範囲」と短期間拡大可能となり、期間についての基準の明確化がされました。

 さらに、「就業可能な内定者」については、従前の決議では無条件で失業者という扱いでしたが、新決議において「就業可能で概ね3か月以内に就業する」内定者だけが失業者となりました。


III. 未活用労働の計測
 未活用労働を計測する指標として以下のLU1からLU4の指標が示され、これらのいくつかを公表すべきとされました(LU1は従来の失業率の定義と同じ)。

未活用労働指標
※ 図中のA、B、Cは、前述の図に対応。

統計局の取組

 ILOの決議は、条約とは異なり、勧告やガイドラインと同様に、拘束力を持つものではなく、新決議においても、決議内容の実施についてはある程度各国の実情により決定されることが認められていますが、国際比較可能性の観点から我が国においても可能なものについては今回の決議の導入の検討を行う必要があります。特に、失業率は、経済的・社会的影響が極めて大きい指標でもあり、統計局としては専門家や関係府省などの意見を聞くとともに、場合によっては試験調査なども実施し、決議内容の導入の妥当性について時系列比較の観点も留意しながら検討してまいります。


(平成26年1月24日)


バック ホーム

ページの先頭へ戻る