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統計Today No.54
働く未来を考える 平成24年就業構造基本調査の実施
総務省統計局統計調査部国勢統計課労働力人口統計室長 河野 好行
就業構造基本調査とは
総務省統計局では、本年10月1日現在で、平成24年就業構造基本調査を実施します。
この調査は、我が国の詳細な就業構造を都道府県などの地域別にも明らかにすることができるものであり、その結果は、喫緊の課題となっている非正規雇用問題への対応、若年層の職業能力の開発・人材の育成、就業と育児・介護の両立支援など、国・地方の雇用や就業に関する様々な立案などに役立てられます。
調査結果からわかること
前回(平成19年)の調査結果では、正規・非正規の職員(従業員)や若年層(15歳〜34歳)の就業状況について、例えば次のようなことが分かります。
図1は、正規の職員(従業員)と、パートやアルバイトなどの非正規の職員(従業員)を男女、年間収入階級別に表したものですが、正規の職員(従業員)と非正規の職員(従業員)とでは、年間収入階級の分布にこのような大きな違いがあることがわかります。
図1 正規・非正規の職員(従業員)の男女、年間収入階級別の構成比
図2は、働いている若年層(15歳〜34歳)の転職希望者の割合を、男女、職業(本人の仕事の種類)別に表したものですが、男女とも「販売従業者」、「サービス職業従事者」などで転職希望者の割合が高くなっています。女性では、特に保安職業従事者で転職希望者の割合が男性に比べて著しく高いことがうかがわれます。
図2 15歳〜34歳の有業者の男女、職業別転職希望者割合
図3は、過去1年間に職業訓練・自己啓発をしたかどうかを、男女、正規・非正規別に表したものです。職業訓練・自己啓発をした人の割合は男女とも非正規の職員(従業員)に比べて正規の職員(従業員)の割合の方が高くなっており、正規の職員(従業員)が仕事で必要とされる職業訓練や自己啓発の機会を確保していることがわかります。
図3 職業訓練・自己啓発をした者の男女、正規・非正規別の割合
今回調査の主な改善点
今日の我が国における雇用・就業を取り巻く社会・経済情勢を踏まえ、平成24年就業構造基本調査では、特に次のようなことが把握できるようにしています。
・非正規の職員(従業員)の詳細な就業実態を明らかにします。
雇われている人(役員を除く)に占めるパートやアルバイトなどの非正規の職員(従業員)の割合は、前回(平成19年)調査では35%と、雇われている人の約3人に1人が非正規の職員(従業員)となっています。一方、雇用形態の多様化を背景に、非正規の職員(従業員)でも正規の職員(従業員)と変わらない就業実態も生じています。
今回の調査では、このような非正規職員(従業員)の状況や就業実態をより正確に把握するため、雇われている人に関して、雇用期間の有無や雇用契約の期間、契約更新の状況などを調査します。
・少子高齢化社会における就業と育児・介護の状況を明らかにします。
少子高齢化社会においては、男女の区別なく働きながら育児や介護も実現できるといったワークライフバランスを推進していくことが何よりも大切です。このため、今回調査では、ふだんの育児や介護の状況や1年間の育児休業や介護休業の制度の利用状況などを調査します。
・東日本大震災の雇用や就業への影響を明らかにします。
東日本大震災からまもなく1年半となりますが、今後の被災地域の雇用や就業の復興方針や計画の遂行に役立てるため、震災の雇用への影響、その後の雇用状況の変化、避難の有無や震災時の居住地などを調査します。
正確かつ円滑な調査の実施に向けて
政府は、本年7月31日、「日本再生戦略」を閣議決定しました。この戦略では、すべての人に居場所と出番があり、若者、女性、高齢者等、全員参加、生涯現役の社会の実現を基本理念として、若者の就労支援の促進、共働きでも子育てしやすい社会の実現による女性の就業機会の促進、高齢者の意欲と能力をいかせる場の確保などを重点施策として取り組むこととなっています。
これらの施策の実現のための基礎資料としてこれまでの就業構造基本調査の結果が活用されていることはもちろんですが、本年10月に実施する就業構造基本調査は、これら施策効果の検証にも役立てられることになっています。
この調査の対象となる世帯は、全国から統計的な方法により選ばれた約47万世帯にお住まいの15歳以上の世帯員(約100万人)です。調査員が調査票の配布と回収にお伺いします。
調査員を始め調査関係者は、調査内容を他に漏らすことは統計法によって固く禁じられていますので、どうか安心して調査票に御回答いただきますようよろしくお願いします。
(平成24年9月3日)