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統計Today No.53

不平等指標と様々な不平等について考える

総務省統計局統計調査部消費統計課長 吉岡 真史


不平等の拡大

 家計や消費を対象とする統計には月次の家計調査とともに5年おきの周期調査である全国消費実態調査がありますが、21世紀に入ってからこれらの統計に現れた家計の所得や資産について、不平等や格差が拡大していると指摘する意見が多いです。例えば、2006年「経済財政白書」(第3章第3節)「家計からみた経済的格差」では、1980年代以降に全国消費実態調査を含む各統計で緩やかにジニ係数が上昇していることが報告されています。さらに、この原因として、例えば、同書(p.262)などでは所得の不平等の大きい高齢者世帯の比率が高まっていることを背景として上げています。下のグラフは統計局のホームページから2009年全国消費実態調査における所得の不平等を各国と比較した結果を引用しています。


  図1 等価可処分所得のジニ係数の国際比較

等価可処分所得のジニ係数の国際比較


 出典: http://www.stat.go.jp/data/zensho/2009/keisu/yoyaku.htm

不平等指標

 全国消費実態調査の結果や「経済財政白書」を見ると、ほぼ一貫して不平等の指標としてジニ係数が用いられています。政府統計では従来から平均値を単一指標として示すことが多く、不平等の指標についてもジニ係数を単一指標として示すことが多いです。不平等の指標としては、ピグー=ダルトン原理を満たすものとして、ジニ係数以外にもアトキンソン指標、一般化エントロピー、タイル指標など分割公理に対応した指標もありますが、国際的な比較の観点からもジニ係数が用いられているものと考えられています。

 ジニ係数は、所得について考えると、世帯を所得の低い方から高い方へと順に並べ、それぞれの世帯が受け取る収入について、全収入に占める比率を求め、これを順次加えていくことによって、所得の累積構成比を求めることができます。所得の累積構成比を縦軸に、世帯数の累積構成比を横軸にとると、両者の関係は一般には図2の曲線のように描かれます。これをローレンツ曲線といい、所得が完全に均等に分配されていれば、ローレンツ曲線は45度線(均等分布線)に一致し、所得格差が小さいときは45 度線に近づき、所得格差が大きいときは下方に膨らみます。そこで、45度線とローレンツ曲線とで囲まれる弓形の面積と、45度線と縦・横軸で作られる三角形の面積の比率は、所得格差の大小を示す指標、すなわち、ジニ係数として利用できます。ジニ係数は、所得格差が小さいときは0に近づき、所得格差が大きいときは1に近づきます。


  図2 ローレンツ曲線とジニ係数

ローレンツ曲線とジニ係数


 出典: 労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2012」p.222


 原理的には、ジニ係数はAとA+Bの面積の比率で表わされます。全国消費実態調査では10分位に分割してシンプソン法で近似しています。


不平等に関する意識

 ジニ係数で表される統計的な不平等とともに、国民の意識として、不平等が少ないことの重要性、また、不平等が少ないことは実現されているか、に関して意識調査も実施されています。下のグラフは、1978年から2008年まで3年おきに内閣府が実施している「国民生活選好度調査」の結果をプロットしたものです。

  図3 収入や財産の不平等が少ないことは重要か

収入や財産の不平等が少ないことは重要か


 出典: 内閣府「国民生活選好度調査」2008年、p.78をもとにグラフ作成


  図4 収入や財産の不平等が少ないことは満たされているか

収入や財産の不平等が少ないことは満たされているか


 出典: 内閣府「国民生活選好度調査」2008年、p.90をもとにグラフ作成


 不平等に関する意識については、時を経るとともに、「ほとんど満たされていない」が上昇、すなわち、不平等感の高まりが見られる一方で、不平等が少ないことを重要と考える国民はまだまだ高い比率を占めていますが、年々減少していることも確かです。


労働者の属性に基づく不平等

 ここまでは日本経済全体のマクロの所得の不平等についてジニ係数を中心に見て来ましたが、ここでは、賃金構造基本統計調査(賃金センサス)の結果から、労働者や雇用者の属性に基づく不平等をいくつか考えてみます。第1に、学歴による賃金の不平等は以下の図5のとおりです。高学歴ほど生涯賃金が高くなっているのが見て取れます。


  図5 男女別・学歴別生涯賃金

男女別・学歴別生涯賃金


 出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2009年


 第2に、年齢階級別の賃金の不平等があります。図6は製造業における男性大卒標準労働者の年齢階級別賃金(所定内給与)です。60歳までは年齢とともに賃金が高くなっているのが見て取れます。


  図6 年齢階級別賃金

年齢階級別賃金


 出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2011年


 最後に、都道府県別の賃金の不平等があります。図7は都道府県別の一般労働者の所定内給与です。東京都が最も高く、青森県が最も低くなっているのが見て取れます。


  図7 都道府県別賃金

都道府県別賃金


 出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2011年

最後に

 2008年にノーベル経済学賞を授賞されたクルーグマン教授が今年1月15日付けのニューヨーク・タイムズのブログで米国大統領経済諮問委員会委員長であるクリューガー教授の「グレート・ギャッツビー・カーブ」という不平等に関する考え方を紹介しています。下のグラフは横軸にジニ係数、縦軸に世代間の所得弾性値を取っています。世代間の所得弾性値とは、例えば、親の世代の所得が1パーセント上昇すれば、子供の世代の所得がどれくらい影響を受けるかの指標であり、後の世代に対して(資産ではなく)所得が「相続」されるとすれば高い値を取ることとなります。すなわち、高所得の親の子供がやはり高所得であれば、この弾性値は高い値を示し、逆に、子供の世代の所得が親の世代の所得から独立であれば弾性値は低くなります。ですから、高所得又は低所得が親から子に世代をまたいで受け継がれるとすれば、社会全体のジニ係数は高くなることが示唆されています。米英でジニ係数が高くて不平等の度合いが大きいのは、親から子へと世代を通じて不平等が代々に渡って波及している可能性があるといえます。


  図8 The Great Gatsby Curve

The Great Gatsby Curve


 出典: http://americanprogress.org/events/2012/01/pdf/krueger.ppt

(平成24年6月28日)


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