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カンボジア統計能力向上プロジェクトの紹介
1. これまでの協力概要
総務省統計局は、2005年以降、カンボジア計画省統計局(NIS)に対し、総務省統計研修所、(独)統計センター、(財)日本統計協会、 (財)統計情報研究開発センター等と一体となって、カンボジア統計能力向上プロジェクトを実施しています。 このプロジェクトは、国際協力機構(JICA)による技術協力プロジェクトとして、
- フェーズ1 2005年8月28日から2007年3月31日まで
- フェーズ2 2007年4月23日から2010年9月30日まで
- フェーズ3 2010年10月9日から2015年3月31日まで
という段階を経て、カンボジアの統計能力向上に協力してきています。2013年現在も本プロジェクトは官民合同型のプロジェクトとして継続中ですが、 以下で各フェーズの技術協力の概要について紹介します。
1.1 フェーズ1
フェーズ1は2005年8月28日から2007年3月31日まで実施されました。フェーズ1の主な目的は、NIS、地方統計職員及び各省庁統計職員を対象に、 その統計能力を向上させることでした。そのため、NIS職員に対し日本から派遣された講師陣による統計研修の実施、州計画局統計課職員など 地方統計機関の能力向上のための研修の実施、統計セミナーの実施などの他、1クラス最大40 名まで、研修生1人に対して1台のパソコンを供与し 統計研修設備の充実を行いました。
写真1 総務省統計研修所職員による統計研修の様子
写真2 総務省統計研修所職員による統計研修の様子
1.2 フェーズ2
フェーズ2は、2007年4月23日から2010年9月30日までの間実施されました。フェーズ2の主な目的は、我が国の技術指導により、 カンボジアの人口センサス及び事業所リスティング(事業所名簿整備調査)の実施能力を向上させることでした。
また、フェーズ2では、カンボジア計画省構内に新たに統計センターを建設しました(2007年12月完成)。 この建物は、6階建てで、集計室、研修室、図書館、データ提供センター等が配置されています。 また併せて、人口センサス等の結果を早期に公表できるようにパソコン等の集計・結果提供用の機材を充実しました。
写真3 2008年人口センサス実地調査の様子
写真4 カンボジア計画省統計局新庁舎
写真5 カンボジア計画省統計局新庁舎 落成記念プレート
1.3 フェーズ3
フェーズ3は、2010年10月9日から開始され、2015年3月31日までの予定で実施されています。 フェーズ3の主な活動は、カンボジア2011年経済センサス、2013年中間年人口調査及び2014年経済統計調査に対する技術協力、 並びに国及び州の統計能力向上の支援です。
写真6 2011年経済センサス実地調査の様子
2. プロジェクトによる技術協力の特徴
JICAの数多の技術協力の中でも統計の分野での技術協力は数少ないものと言えます。 そのような中で、本プロジェクトは、1.フェーズ1では統計研修(中央研修及び地方研修)中心の支援を通じて 調査の実施に必要となる統計能力を身に付けた人材育成を行い、フェーズ2の人口センサス及びフェーズ3の経済センサスの実務を通じて 知識の定着を図っていること、2.統計調査の川上(企画・設計段階)から川下(分析・公表段階)まで一貫した技術協力を行っていること、 3.NISだけでなく他省庁の職員に対し統計研修を実施することによりカンボジア政府全体の統計能力向上にも寄与していること、 4.人口センサス、経済センサスの2大センサスの実施に加え、センサス結果に基づく小地域統計の整備、事業所名簿情報の整備、 中間年人口調査や経済統計調査といった標本調査のためのフレーム(母集団の台帳)の整備を行っていること、 5.プロジェクトの最初から官民合同で、なおかつ短期専門家(シャトル型)のみで技術協力を行っていること、 6.国連人口基金(UNFPA)と連携して人口センサスや中間年人口調査に技術協力を行っていること、 7.インドネシア、スリランカ及びラオスの第三国の政府統計機関と技術交換を行っていることなどが特徴と言えます。
3. 今後の展開
カンボジア政府が実施した人口センサス及び経済センサスの結果(統計表、分析レポート、統計地図など)は、 カンボジア政府が人口・社会政策、経済政策、財政政策といった各種政策を企画・立案していく上での基礎資料となり得るものと言えます。 また、小地域統計の整備は地方レベルでの施策の企画・立案に資することが期待されます。
カンボジアの統計の整備が進むことにより、我が国のみならず国外からのより的確な投資判断ができるようになり、 カンボジアの発展に資することが期待されます。たとえば、経済センサスの結果を利用して産業連関表を作成すれば 直接投資の経済波及効果をより高い信頼性を持って推計できるようになるでしょう。
センサスの結果から整備されるフレームは、NISだけでなく他省庁が標本調査を実施しようとする際の基盤をも与えるものです。 中間年人口調査や経済統計調査を通じて、NIS自らが他の標本調査の設計を行い得る能力を身につけるよう、 プロジェクトの残りの期間を通じて支援をしていくこととしています。
近年、わが国の公的統計では、調査手段として従来の調査員調査と併用してセキュリティを確保したインターネット調査の導入が進んでいます。 情報通信技術を統計調査に利用する場合のメリットの一つとしては総予算の縮減が考えられます。情報通信技術の利用に関しては、 いわゆる先進国と発展途上国といった図式はないと言っても過言ではなく、財政的に厳しい発展途上国で統計調査を実施する上で 電子的な調査技術を導入することには意味があることであると言えます。
- さらに詳しくお知りになりたい方は、カンボジア政府統計能力向上プロジェクト フェーズ3のページをご覧ください。