ここから本文です。

葉山町きれいな資源ステーション協働プロジェクト

神奈川県 葉山町 政策財政部政策課 環境部環境課

神奈川県葉山町 総務大臣賞 住民生活・安全 環境・エネルギー 行政データ

「葉山町きれいな資源ステーション協働プロジェクト」サムネイル画像

概要

 町内にある資源ステーション(資源集積所)に取り残されるごみを無くすために取り組んだプロジェクトです。町内(自治)会との協働により、資源ステーションをモニタリングし、どのようなごみがどれだけ取り残されているかをデータ化し、分析を行ったうえで仮説を立てました。その仮説に基づき対策を実行し、その効果をランダム化比較試験にて測定しました。その結果、効果のあった収集の終了を知らせる看板を町内の全ステーションに設置しました。

導入費・運用費

導入費 約2,250千円(看板作成代)
運用費 −

受賞

  • 「第4回 地方公共団体における統計利活用表彰 総務大臣賞」(2019)
  • 「行革甲子園2016 優秀賞」(2016)

取組の流れ

  • PPDAC-problemアイコン画像

    資源ステーションの不適切な利用を改善したい

  • PPDAC-planアイコン画像

    町内全域でモニタリングを実施して、データを分析

  • PPDAC-dataアイコン画像

    町内約3分の1の資源ステーションで1000回以上のモニタリング実施

  • PPDAC-analysisアイコン画像

    ごみの取り残し頻度や再現性の高い分別間違いを抽出しデータ化、RCT*1では対策の効果を重回帰分析により分析

  • PPDAC-conclusionアイコン画像

    要因を掴み、分別間違いと収集後の後出しを防ぐ

ヒアリング・ここが知りたい!

どのような課題がありましたか?

資源ステーションの不適切な利用への対策

 葉山町では平成26年6月から、ごみの収集方法をゴミステーション方式から戸別収集に変更しました。以前の方式と比べると、利用環境の改善は見られるものの、依然として適切な利用がされていない資源ステーションが存在しており、町も町内(自治)会も独自に対策を行っていましたが、効果的な対策が見出せずにいました。そこで課題を根本から解決するため本プロジェクトを開始しました。

エビデンス(データ)収集のために、どのような計画を立てましたか?

事前モニタリングで仮説を立て、RCTで効果測定

 まず町内6地区全域で、事前モニタリングを実施し、結果をデータ化し、分析を行いました。このデータに基づき、仮説を立て、対策案を検討しました。そして、この対策案を実施し、RCT(ランダム化比較試験)によって効果の測定を図りました。

データの収集はどのように行いましたか?

110人で約1200回のモニタリング

町内会と協働してモニタリングや対策案を検討

 町内(自治)会と協働し、町内の約3分の1にあたる160の資源ステーションを約3週間かけて、どのようなごみがどのような時にどれだけ取り残されているかをモニタリングし、データ化しました。(延べ110人で約1200回のモニタリングを実施)
(活用した統計データ:事前モニタリングデータ(約3週間分)、RCT用モニタリングデータ(約1か月分))

どのような分析を行いましたか?

モニタリング結果を重回帰分析

 まずはモニタリングした結果を収集し、「ごみの取り残しが起きた頻度」や「取り残された燃やすごみの傾向」「取り残されたプラスチックごみの傾向」「取り残された粗大ごみの傾向」等、再現性の高い事例を抽出し分析しました。その後のRCTの際には、モニタリングで得られた対策の効果を重回帰分析により測定しました。
(活用したツール等:Excelなどの表計算ソフト)

ランダム化比較実験

結果としてどのような政策に結びつきましたか?

要因は「不法投棄」ではなく「単純な分別間違い」や「収集後の後出し」と判明

 分析前は、「不法投棄が主な原因ではないか」と想定していましたが、集計・分析の結果、「収集後の後出し」「単純な分別間違いや排出場所の間違い」が大半でした。そこで、これまでの対策を大幅に変更する必要があると分かりました。具体的には、「チラシのポスティング」「『収集終了』看板の設置」を新たな対策として行い、対策の効果検証として「ランダム化比較試験(RCT)」を行いました。(約1ヶ月間、160ヶ所を延べ115人で1600回モニタリング)
 また、上記の対策検討を行うにあたり、町民の方々とワークショップを3回開催しました。このワークショップでは延べ約120名が参加し、毎回異なるグループ分けで多角的に検討することができました。対策決定する際は参加者による投票を行い、全員が納得のいく形でプロジェクトを進めました。

チラシと看板の効果の持続力

データ利活用(収集や分析)において工夫した点や難しかった点について教えてください。

住民理解へモニタリングシートを簡素化

葉山町役場

 そもそも、ごみの不法投棄に関する統計データが存在しなかったことから、自分たちでデータ集計表等を作ることから始める必要がありました。また、データを取る際にも、町内(自治)会に協力を依頼したが、趣旨説明会では大紛糾し、事前モニタリング開始まで3ヶ月以上かかるなど、住民に理解してもらう点が一番苦労しました。
 工夫した点としては、住民に記入してもらうモニタリングシートは町内(自治)会の意見を聞きながら、必要最低限の項目にしぼり、散歩がてら、記入できるようなものを作成しました。(一方、データの入力作業に時間を要し、データ量はエクセルシートで1.8MB分になったため、今後は何かしら工夫が必要であると感じています)

その政策によって、どのような効果が現れましたか?
また、今後どのような改善点や展望をお考えでしょうか?

ごみの資源化率は約50%に到達

 チラシのポスティングは、分別間違いを7〜8割削減することができたものの効果の持続性が低く、「収集終了」看板の設置については、不法投棄全体の15%削減につながり、効果の持続性も確認できました。
 今回の検証結果をもとに、これらの対策をそのまま政策に反映し、チラシはバリエーションを増やして町内(自治)会にデータを提供し、収集終了の看板は平成29年度予算計上し、町内全ての資源ステーションに設置しました。ごみの減量率も毎年約20%超を維持しており、平成30年度には資源化率が約50%まで到達しました。
 ごみの分別間違いについては引き続き啓発を行っていき、資源ステーションの美化を保ち続けたいと思います。また、ごみの問題は様々な原因(認知症の方や外国人の方など)があるので、こちらも町民の方々と協力し、改善を図っていきます。
 さらに、今回のプロジェクトの最大の効果は、町内(自治)会と町役場の距離がぐっと縮まったことであると感じていますので、今後も色々な協働プロジェクトに取り組んでいきたいと思います。

脚注

 *1 RCT:
 ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial)の略。ランダム化比較実験ともいう。

サイトマップ
ページ上部へ アンカーのアイコン画像