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第4章 通貨・資金循環 解説

 この章では,日本銀行券と補助貨幣とを合わせた現金通貨の流通高を表す「通貨流通高」,現金通貨の外に預金通貨,準通貨なども含めた総通貨が,いかなる要因によって増減するかを見る「マネーサプライ及び関連指標」,あるいはどのような信用供与の形態を通じて預金通貨等が供給されているかを示す「マネタリーサーベイ」,金融機関と個人,企業,国などとの間の資金移動に伴う準備預金の増減を示す「資金需給」,さらには国民経済における通貨・信用の流れを包括的,網羅的に記録した「資金循環勘定」を代表的な通貨統計として収録している。

通貨の範囲

 強制通用力を持つ法貨としての資格のある銀行券と補助貨は現金通貨と呼ばれ,最終支払手段として用いられている。現金通貨は,一部は預金の引出しなどに備えて銀行の手元に保有されるが,大部分は銀行外に流出し(これを流通現金という),主として賃金・給料の支払や個人の消費支出,企業の小口取引の決済などに充てられる。しかし,企業間の大口取引の決済は,小切手の受渡しに基づく銀行の預金口座間の振替によって行われる。こうした小切手を振り出すことのできる当座預金は,支払手段としての機能を果たしているところから,一般に預金通貨と呼ばれている。容易に現金通貨に換えることのできる普通預金や通知預金などの要求払預金も預金通貨として扱われている。通常,通貨という場合には,この現金通貨と預金通貨を合わせたものをいう。
 一般に通貨の働きとしては,このような支払手段の外に,購買力の保蔵手段としての側面があり,前者の働きについては取引通貨,後者の働きについては資産通貨ということができる。上述の現金通貨と預金通貨は,いずれもこの通貨の二つの機能を備えている。これに対して,定期性預金は,その預入期間の長さにもよるが,満期まで待つか,解約するかしなければ,これを現金通貨に換えることができない。つまり,定期性預金は,支払手段としての取引通貨の機能に欠ける面があるが,資産通貨としてはより大きな機能を備えている。その意味で,定期性預金は準通貨と呼ばれており,通貨を広義に解するときには,現金通貨と預金通貨の外,この定期性預金を含めたものをいう。

通貨流通高

 通貨流通高とは,日本銀行から市中に払い出された通貨の総量をいい,日本銀行券の発行高と貨幣(いわゆる硬貨)の流通高を合計したものである。貨幣については,発行高から日本銀行保有分が除かれているため流通高と言い表している。
 日本銀行券については,種類別月末発行高の外に,全体についての月中の最高発行高も公表されている。また,貨幣については種類別月末発行高が公表されている。
 通貨流通高は消費を中心とした景気動向を簡便にとらえる指標として利用される。しかし,近年,キャッシュレス化やCD,ATMの普及などが通貨流通高に種々影響を与える点に注意して利用する必要がある。また,銀行券の発行と還流は,短期金融市場の需給の逼迫・緩和要因となるので注目されることが多い。

1 日本銀行券

 日本銀行は,明治17年(1884)5月に公布された「兌換銀行券条例」に基づき,翌18年(1885)5月9日に銀貨兌換の銀行券を初めて発行し,その後30年(1897)「貨幣法」公布に伴ない金貨兌換に改められたが,32年(1899)12月以降は,それまで流通していた政府貨幣や国立銀行券が流通禁止となったため,流通する紙幣は日本銀行兌換券のみとなった。その後,日本銀行券の金貨兌換は,昭和6年(1931)から大蔵大臣の認可を要することとなり,事実上兌換停止となっていたが,17年(1942)2月公布の「日本銀行法」により兌換義務が免除され,日本銀行券と称せられるようになった。
 この間,銀行券発行制度としては,明治21年(1888)8月から保証発行屈伸制限制度が導入されてきたが,昭和7年(1932)7月に保証発行限度の大幅引き上げがあって,管理通貨制度への第一歩を記した後,16年(1941)4月から最高発行額制限制度が採用され,翌17年(1942)2月の日本銀行法により法制上も管理通貨制度に移行した。最高発行限度は財務大臣が決定することになっているが,日本銀行が必要と認めるときは,この限度を超えて銀行券を発行できることになっている。ただし,限外発行が15日間を超える場合は,財務大臣の認可が必要で,16日以後も限外発行を続ける場合には,日本銀行は制限外発行税を納付しなければならない。
 また,日本銀行は,銀行券発行高に対して同額以上の保証物件を保有しなければならないと定められており,その保証物件としては手形,貸付金,国債その他の有価証券,外国為替,地金銀が認められている。
 日本銀行券はあらゆる取引に無制限に適用する強制通用力を備えており,法貨とも呼ばれる。
 10銭券,5銭券は昭和28年(1953)末限りで通用禁止になったが,一方,高額券としては,32年(1957)10月に5千円券,翌33年(1958)12月に1万円券が発行され,近年では,平成12年(2000)7月に2千円券が発行された。

2 補助貨幣

 補助貨幣とは,本位貨幣や銀行券の補助として用いるために発行される少額の鋳貨又は紙幣のことをいう。我が国では,昭和13年(1938)6月制定の「臨時通貨法」により政府が500円貨,100円貨,50円貨,10円貨,5円貨,1円貨を発行してきた。その後,昭和62年(1987)に「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」に改正されて,これらは貨幣と称されるようになり,その強制通用力は額面金額の20倍までと定められた法貨となっている。
 1円未満の補助貨幣は,50銭の政府紙幣等とともに,昭和28年(1953)末限り通用禁止となった。一方,オリンピック東京大会記念1,000円銀貨(昭和39年(1964))や,皇太子殿下御成婚記念50,000円金貨(平成5年(1993))等の記念貨幣が発行された。

マネタリーサーベイ

 マネタリーサーベイは,IMF(国際通貨基金)が採用している通貨金融統計方式に基づき,昭和32年(1957)(計数は昭和28年(1953))から日本銀行によって作成されているもので,通貨当局(日銀,外国為替資金特別会計)及び預金通貨銀行(信託勘定を除く国内銀行,外国銀行在日支店,信用金庫,農林中央金庫,商工組合中央金庫,信金中央金庫)の諸勘定を,金融機関相互間の重複勘定を相殺して統合し,更に勘定科目を合算,分割するなどして統合・調整した通貨供給部門の統合貸借対照表であり,通貨残高(負債)とそれに見合う与信残高(資産)とを対置したものである。資産としては主として信用供与先部門別(外貨資産,対政府信用,対地方公共団体,対民間信用)に資金形態別(貸出有価証券)内訳を,負債については主として通貨の流動性別(現金通貨,預金通貨,準通貨+CD,政府預金等)内訳を表示している。これによって,負債勘定における通貨の増減がどの部門との取引によって生じているかが分かるようになっている。
 このマネタリーサーベイ統計については,発足以来昭和42年(1967)及び53年(1978)に大幅な改定が行われている。昭和42年(1967)の改定に当たっては33年(1958)まで,53年(1978)の改定に当たっては46年(1971)まで遡及改定されているため,32年(1957)以前と33年(1958)〜45年(1970)及び46年(1971)以降とは,時系列的には連続しない。
 昭和32年(1957)までの対象金融機関は,日銀,全国銀行,相互銀行,信用金庫,農林中金,商工中金,信用農業協同組合連合会,農業協同組合及び資金運用部資金,外国為替資金であり,現行に比べて対象の範囲が広い。「郵便貯金制度」は,資金運用部資金のうち郵便貯金とその見合資金である。昭和33年(1958)以降は,対象金融機関をマネーサプライと合わせる意図もあって,郵便貯金制度の外,信用農業協同組合連合会,農業協同組合,全国銀行信託勘定も除外した。
 昭和46年(1971)以降については,公的部門の対外資産を国際収支表金融勘定によることとしたため,「その他」の数値が変更された。
 なお,平成12年(2000)にIMFの金融統計マニュアルが改訂されたのに伴なって,マネタリーサーベイ統計の見直しが行われ,平成15年(2003)8月公表分から新ベースへ移行した。その主な変更は,従来通貨当局の勘定に含まれていた外国為替資金特別会計を除いて,勘定名を中央銀行勘定に改めるとともに,信用供与先部門の政府に外国為替資金特別会計を含めたこと,その政府に一括されていた公団,事業団を除いて,新たに公的法人を独立項目として設けたこと,さらに,資産と負債を相殺しネットアウト表示をしていた項目(対外資産,その他資産,その他負債)について資産,負債のそれぞれ表示するグロス表示に改めたことなどである。
 また,債権現先取引,現金担保付債権貸借取引を債権を担保として資金取引として計上するなど金融取引の多様化等にも対応した改訂も行われた。
 このような取扱いは,マネーサプライ統計や資金循環統計でも同様に行われていて,統計相互間の整合性が保たれている。
 なお,新ベースによる係数は,平成10年(1998)4月まで遡及して公表されたが,長期統計としては時系列が短いため,本章では従来ベースの計数を収録した。

マネーサプライ及び関連指標

 マネーサプライは,現金通貨だけでなく,預金通貨(要求払預金),準通貨(定期性預金)及びCD(譲渡性預金)等をも含めた一国の通貨総量(民間非金融部門保有分)の大きさを測るために日本銀行が昭和30年(1955)から作成している統計であり,実体経済や物価動向と密接な関係を持っているため,重要な経済指標とされている。このうち,は経済活動に用いられる通貨を幅広く網羅しているため,実体経済や物価の動向と相関度が高く,速報性もあることからマネーサプライの代表的指標として用いられてきた。しかし,金融自由化の進展とともに,郵便貯金や金銭信託等の対象外金融資産との間の資金シフトが重要になった外,何らかの「流動性」を有する金融商品(具体的には投資信託,金融債,国債,外債等)を含めた集計量の必要性もあって,広義流動性も作成されるに至っている。マネーサプライ指標の詳細な定義は次表のとおりである。
 また,増減と信用面における対応に関する統計は,マネタリーサーベイの集計対象金融機関のバランスシートの増減から算出したもので,がどの部門に対する信用供与として増減したかを分析するために利用できる。

マネーサプライ指標の定義

マネーサプライ指標の定義 

資金需給

 金融機関とそれ以外の経済主体(個人,企業,国,日本銀行)との間の資金の移動に伴なう金融機関全体の日銀への準備預金の増減が資金需給であり,準備預金が増加する場合を資金余剰,減少する場合を資金不足という。これを日本銀行の勘定面からとらえて,銀行券の発行・還収や財政等の支払いによって生じた金融市場の過不足が最終的に日銀信用(貸出,買入手形,FB売買等)によって調節される状態を示した統計である。
 この仕組みは,銀行券発行(還収△)-財政資産超(揚超△)-その他払超(受超△)不足=準備預金取崩し(積増△)+日銀信用増加(減少△)という式で示すことができる。
 このように,日本銀行が資金需給の動向を勘案しながら日々の金融調節を行った結果を,迅速かつ的確に把握できる有用な統計である。
 なお,日本銀行調査統計局調の「明治以降本邦主要経済統計」には「日本銀行券発行還収要因」統計として,明治18年(1885)から昭和40年(1965)までの計数が公表されている。

資金循環勘定

 資金循環勘定は,国民経済の金融面の動きを総合的体系的にとらえた統計であり,国民経済計算体系の一部を構成するものである。
 日本銀行では,この統計を国連統計委員会が策定した国際基準に準拠して,昭和29年(1954)以降分について作成公表してきたが,その国連基準が平成5年(1993)に改定されたのを受けて,約40年ぶりに大幅な見直しを行い,平成元年度(1989)末までの遡及計数を公表した。今回の見直しにより,年金基金やノンバンクなど,預金を取扱わない金融機関の動向や,金融派生商品,債権流動化関連商品といった新たな金融取引の実態を把握できるようになった外,GDP統計など実体経済との対応関係をより正確に把握できるようになった。
 資金循環統計は,金融機関,企業,個人,政府など各経済主体(部門)相互間の一定期間(四半期,年度)における資金の流れを示す「金融取引表」(フロー表),各部門の資産・負債の期末残高を示す「金融資産・負債残高表」(ストック表)及びストック表の増減額とフロー表の取引額との差額,すなわち期中の価格変化額等を示す「調整表」の3表から構成されている。
 経済主体(部門)は,国民経済計算の「制度部門」との整合性を図る形で93SNAに準拠し,金融機関,非金融法人,一般政府,家計,対家計民間非営利団体及び海外の6部門に大別,更に内訳部門に細分され,計46部門に分割されている。一方,金融商品も分類した取引項目は,現金・預金,貸出,財政融資資金預託金,株式以外の証券,株式・出資金,保険・年金準備金などの集計項目とその内訳項目を合わせて52項目に分けられている。
 これら3表は,行列(マトリックス)形式で表示されているため,フロー表では,各部門の資金が,当該期間中に「誰から誰へ」,「どのような形で」流れたか,すなわち運用,調達の明細が分かる外,各部門の金融取引の帳尻は「資金過不足」に表れ,それが貯蓄・投資差額に対応している。また,ストック表では,金融商品がどの部門の資産あるいは負債になっているかを把握できる一方,例えば家計の金融資産の内訳を知ることもできる。
 本章における新系列(93SNA)では、6大部門の主要取引項目について,金融取引と金融資産・負債残高を収録している。

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