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第3章 国民経済計算 解説

 この章では,国民経済計算のうち,国民所得勘定,産業連関表,国民貸借対照表を収録するが,資金循環勘定は「第4章 通貨・資金循環」に収録する。また各県で推計されている県民経済計算も合わせて収録した。国民経済計算については,昭和28年(1953),43年(1968)及び平成5年(1993)の3回,国際連合より勧告が出され,その都度改定されてきている。したがって,系列が必ずしも一貫していないので,初めに国民経済計算の沿革を概観し,体系の内容については平成5年(1993)改定を中心に解説する。

1 国民経済計算

 国民経済計算(System of National Accounts,以下SNAという)は,国際連合などの勧告による世界共通の基準と概念に基づいて,一国経済の全体を記録する包括的な体系である。生産・分配・支出のマクロ的循環をとらえるばかりでなく,経済を特徴付ける構造的情報を提供し,また,ストックとフローの関連を把握することを可能とする。その推計には膨大な基礎統計を必要とし,これら統計の整備・改善に体系的指針を与える役割も担っている。

2 推計の沿革

 日本においては,大正14年(1925)についての内閣統計局(現総務省)の推計を最初として,第2次世界大戦前にも,幾つかの推計が行われた。戦後においては,国民所得の総額に重点を置いた推計から,経済の構造的循環をとらえる国民所得勘定へと発展し,昭和28年(1953)に「昭和26年国民所得報告」として閣議報告されて以来,毎年,政府による推計,公表が行われるようになった。推計担当部局は,昭和33年(1958)以降,経済企画庁経済研究所国民所得部であったが,現在は,その後継部局である内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部となっている。
 戦後のSNAの国際基準の改定に対応して,体系の大幅な改定が3度にわたって行われた。国連は,昭和28年(1953)に国際基準の統一を目指して,A System of National Accounts and Supporting Tables(53SNA)を提案した。日本でも,これに応じて昭和41年(1966)に,26年度(1951)までさかのぼる,53SNA準拠の計数が公表された。この体系は,「国民総支出と総生産」,「国民所得分配」,「個人」,「一般政府」,「資本形成」及び「海外」の六つの基本勘定を持つものであった。
 昭和43年(1968),国連統計委員会は,53SNAを大幅に改定するA System of National Accounts(68SNA)を提示した。68SNAは,国民所得勘定を中心に産業連関表,資金循環勘定,国民貸借対照表及び国際収支表の五つの経済勘定を統合するもので,それまでの国民所得統計では把握できなかった,フロー(生産,分配所得,支出)とストック(資産,負債残高)の関係,財貨・サービスの取引と金融取引の関係を整合的に分析,解明できることになった。また,68SNAでは,対象範囲が拡充されただけでなく,商品別,産業別,目的別,形態別などに計数が細分化,精緻化され,構造的情報が大幅に増大した。日本では,昭和53年(1978)に68SNAへの全面的移行が行われた。日本の68SNAのフロー編は,統合勘定,制度部門別所得支出勘定及び制度部門別資本調達勘定のほか,三つの主要系列表,21の付表などからなる。また,ストック編は,統合勘定,制度部門別勘定,五つの付表などからなる。68SNAの計数は,フローについては昭和45年(1970),ストックは44年(1969)末までが推計されている。ただし,総支出,国民所得及び総生産の主要系列表,国民資産・負債残高については,53SNAの計数の概念調整により,30年(1955)あるいは29年(1954)末までさかのぼって推計されている。
 さらに,平成5年(1993)には,国連など五つの国際機関によるSystem of National Accounts 1993(93SNA)が勧告された。68SNAの提示から四半世紀を経て,各国経済の構造も大きく変化し,SNAを見直す必要性が認識されたことが背景にあった。このSNAの改定のねらいは,その主体系について三つある。すなわち,経済構造の変化への対応,諸概念の一層の明瞭化,他の統計体系との調和である。また,付帯的体系としての「サテライト勘定」の作成を提唱している。これは,主体系の一貫性は崩さずに,政策的に重要な分野について関連する情報を整理・統合し,主体系との関連において示すものである。主要先進国では93SNAへの移行を終えており,日本では平成12年(2000)の平成7年基準改定において,2年(1990)以降の計数が改定された。ただし,主要な支出系列については,昭和55年(1980)までそ及改定が行われた。

3 93SNAの体系

(1) フローとストックの体系

 93SNAも次の五つの基本的な勘定からなる体系であることは,68SNAと同じである。

[1]国民所得勘定

 狭義のSNAであり,国内総支出,国民所得などの集計量や所得支出勘定,資本調達勘定などを含む。

[2]産業連関表

 経済活動(産業部門,政府など)別の生産費用構造,財貨・サービスの処分を示すものである。ただし,SNAの産業連関表では,行は財貨・サービスの分類だが,列は経済活動の分類である。

[3]国際収支表

 海外との財貨・サービスの取引や海外との所得の受払い,移転のやり取りを示すものである。

[4]資金循環勘定

 以上の3勘定は財貨・サービスの取引(実物取引)を記述するものであるが,この勘定は,実物取引の裏側にある資金の流れ,あるいは実物取引とは独立した金融取引(借入れによる株式購入など)を取り扱う。

[5]国民貸借対照表

 以上の4勘定はすべてフローを取り扱うが,フロー取引の結果として,あるいは資産価格の変動の結果として残るストックを示すのがこの勘定である。金融資産・負債のバランス・シートだけでなく,住宅,ビル,機械設備,社会資本などの生産資産,土地,森林など有形資産の価値が評価される。
 SNAにおいて,生産を扱う場合は経済活動による分類が行われるが,分配,支出などの記録では,五つの制度部門の分類による。このうち非金融法人企業は,民間の事業法人と公団などの公的企業からなる。金融機関は,銀行,証券,保険などの民間金融機関と日本銀行を始めとする公的金融機関を含む。一般政府は,公共部門から公的企業と公的金融機関を除いた部門であり,一般行政,教育,廃棄物処理などを含む。家計は,基本的に消費者であるが,個人企業の会計が分離できないため,生産主体としての性格も備えている。対家計民間非営利団体は,私立学校,文化団体,社会福祉団体など,民間の自発的な意思によって結成され,非営利的な活動に従事する団体である。

(2) 勘定体系

  SNAの中核である国民所得勘定では,一国経済についての統合勘定が,まず,国内総生産とその最終支出形態である国内総支出との対応について示される。国内総生産から発生する所得に海外との所得のやり取りを加除して国民可処分所得が得られ,これは一国としての最終消費支出と貯蓄の源泉となる。この貯蓄は,国内資本形成を賄い,残余は対外バランスを示す海外に対する債権の変動となる。以上の統合勘定の三つのうち後の二つは,所得支出勘定及び資本調達勘定として,制度部門別にも示される。

(3) 国内総生産と総支出

 産業連関表(取引表)をみると,縦方向には生産の費用構成が記録されている。左上の小行列を中間投入といい,生産過程において使用される原材料・部品などの価値を示している。生産物の価値である国内生産額から中間投入の合計を差し引いたものは粗付加価値と呼ばれ,その合計が国内総生産(GDP)である(ただし,SNAでは家計外消費は中間投入とする)。粗付加価値は,雇用者所得(SNAでは雇用者報酬),営業余剰(SNAでは営業余剰・混合所得),資本減耗引当(SNAでは固定資本減耗),間接税,補助金からなる。雇用者報酬は,被用者への報酬であるが,賞与などを含む現金給与の他にも,社会保険への雇主負担,退職金,食事・通勤定期券などの現物給与などが含まれる。固定資本減耗は,減価償却費に資本偶発損を加えたものである。減価償却費は固定資産の更新に備えて積み立てられる資金を指し,企業会計上の概念と同じである。資本偶発損とは,事故や災害などによって通常予想される損害に対応するものである。間接税は生産活動によって生み出された価値とはいえないが,財貨・サービスの現実の取引がこれを含めて行われるため,支出側とのバランスを保つため,粗付加価値に含める。補助金はマイナスの間接税として控除される。営業余剰・混合所得は,粗付加価値から雇用者報酬,固定資本減耗及び純間接税を差し引いたもので,推計上もこの手続きが取られる。営業余剰・混合所得は,企業会計上の営業利益に近い。
 一方,産業連関表を横方向にみると,生産物の利用形態が記録されている。利用形態別の合計は,再び国内生産額として記録されている。したがって,民間最終消費から輸入(控除)までの最終需要項目の合計は,GDPと同じく国内生産額と中間投入の差額に等しい。最終需要項目の合計は国内総支出(GDE)と呼ばれ,その額はGDPに等しい(ただし,推計上の誤差である統計上の不突合の相違はある)。これを生産・支出の二面等価という。

(4) 国民総所得

  GDPは国内の経済活動の最終的な成果を示すものであるが,その国の居住者が得る所得に関しては,この外に,海外で保有する資産が生み出す利子・配当などの財産所得,雇用者報酬などの受取・支払がある。68SNAまでは,GDPに海外からのこれらの所得の純受取を加えたものを国民総生産(GNP)と称していた。しかし,この海外からの所得の源泉は海外の生産活動の成果(GDP)であり,これをその国の生産(product)の一部とするのはおかしいということから,GNPの用語を廃止し,国民総所得(GNI)と呼ぶこととなった。GNIとGNPは,計数の上では異なることがないが,重要なのは,この集計量が生産ではなく所得を示す概念であることが明確にされたことである。

4 93SNAによる主要な改定

(1) 所得の分配と勘定体系の拡張

 93SNAでは,所得支出勘定を所得の発生・支出の幾つかの段階に分けてとらえることにしている。「所得の第1次配分勘定」は,第1次所得がどのように制度部門に配分されるかを示すものである。ここで第1次所得とは,「生産過程への参加又は生産に必要な資産の所有の結果として発生する所得」と定義され,雇用者報酬,営業余剰,混合所得,生産・輸入品に課される税(控除補助金)に加え,金融資産又は土地の貸借に関する財産所得の受け払いを含む。第1次所得の受取と支払の差額を第1次所得バランスとする。
 また,教育,保険サービスなどのように,一般政府あるいは対家計民間非営利団体から,無料あるいは経済的に意味のない価格で家計に提供されるサービスや,現物の社会扶助給付などを含む現物社会移転という新たな概念が導入された。「所得の第2次分配勘定」は,第1次所得バランスが現物社会移転を含まない経常移転の受取と支払によって,可処分所得につながるまでを記録する。「現物所得の再分配勘定」は,さらに現物社会移転を含めた可処分所得を記録する。現物社会移転を含む可処分所得の概念を調整可処分所得という。
 「所得の使用勘定」には,「可処分所得の使用勘定」と「調整可処分所得の使用勘定」の二つがある。可処分所得の使用勘定では家計の実際の支出である最終消費支出が記録されるのに対し,調整可処分所得の使用勘定では最終消費支出に現物社会移転を加えた現実最終消費が記録される。年金基金については,負担と給付が密接に関連している場合に,その年金基金を社会保障基金から切り離して金融機関に含め,家計との受け払いを移転ではなく金融取引とした。しかし,このような取扱いは一般的に家計の認識とは一致せず,家計は年金基金に関する負担と給付を移転と考えるだろうということから,93SNAの可処分所得あるいは調整可処分所得は,これらを移転として含むものとして記録される。この取扱いの相違が貯蓄に影響を与えないようにするために導入されたのが,年金基金準備金の変動と呼ばれる調整項目である。

(2) 最終消費の二元化

 最終消費支出は,その費用を負担する制度部門に記録される。したがって,現物社会移転として家計が最終的に使用した消費についても,その費用を負担している一般政府あるいは対家計民間非営利団体の最終消費支出である。家計の現実最終消費は,最終消費支出に現物社会給付を加えるものであり,家計がその便益のために使用した財・サービスの大きさを測ることを目的としている。それは最終消費支出よりも家計の生活水準のよりよい尺度であると考えられている。68SNAでは,医療費のうち社会保障基金から支払われる部分は,社会保障基金から家計への移転となり,家計が支出することになっていた。93SNAでは,これが社会保障基金の最終消費支出とされ,家計への現物社会移転としてその現実最終消費に含まれる。

(3) 固定資本形成の範囲の拡大

 68SNAまでは中間消費とされた鉱物探査費用の支出及びコンピューター・ソフトウェアの開発を固定資本形成とする。したがって,そのストックは固定資産となる。また,民間用に転用可能な固定資産に対する軍の支出も固定資本形成とする。具体的には軍が所有する飛行場や病院,学校,民間が使用しているものと同じタイプの機械や設備などが含まれる。

(4) 社会資本の固定資本減耗

 68SNAでは,一般政府が所有する建物に関して帰属的な固定資本減耗の計算を行っていたが,道路,ダム,港湾などの社会資本は,適切な補修により無限の耐用年数を持つものとして固定資本減耗の計算の対象ではなかった。93SNAは,固定資本減耗の帰属計算を一般政府が所有する固定資産の全体に拡大する。68SNAの政府建物以外の社会資本は,生産される固定資産は何らかのサービスを生産するというSNAの原則の例外であって,民間資本との間で対称性を欠いていた。93SNAにおける変更により,社会資本によるサービス生産が認識され,これが固定資本減耗に相当する。固定資本減耗は政府サービス生産者のコスト項目であるから,その拡大は政府の産出と最終消費支出を増加させることになる。

(5) 公立病院などの市場生産者としての分類

 年金基金が社会保障基金から金融機関へ分類替えになったのと同時に,一般政府あるいは対家計民間非営利団体とされていた国公立の医療機関と日本赤十字など一部の非営利医療機関は,市場生産者として,すなわち非金融法人企業に分類変更される。その理由は,営利性の差はあるとしても,これらの医療機関の医療サービスが,他の医療機関と同じく,健康保険制度という同一の枠組みにおいて供給されていることによる。この変更は,政府最終消費を減少させる。

(6) 不良債権の償却の調整勘定による取扱い

 日本の68SNAにおいては,不良債権処理を経常移転として記録していた。すなわち,返済不能となった債務者に対して金融機関から所得移転が行われ,債務者がこの移転を返済に充てることにより債権・債務関係が解消されるものとしていた。経常移転は,日常的に繰り返される性格をもつ移転取引であるから,バブルの崩壊以降に発生した大規模な不良債権の処理を,経常移転として取り扱うことは適切でない。93SNAにおいては,債権者によって貸借対照表から抹消された不良債権を,調整勘定で保有損失として取り扱う。

(7) 調整勘定の細分化

 68SNAの貸借対照表勘定の調整勘定は,資本取引以外の要因による資産・負債残高の変動を一括して記録していたが,これを,まず,[1]その他の資産変動量勘定,[2]再評価勘定の二つに分ける。その他の資産変動量勘定は,例えば地下資源の発見や大地震による破壊など,資本取引以外の要因で発生する実質量の変動を記録する。上述の不良債権の処理なども,これに含まれる。その他の変動を除いた上で,価格変動による再評価を行うが,これは,さらに一般物価水準の変動に見合った中立保有利得・損失と,これを上回る実質保有利得・損失の二つに分けられる。

5 県民経済計算

 県民所得の推計は,昭和22年(1947)の鹿児島県によるものを端緒とし,他の都府県へと広がっていった。昭和31年(1956)に経済企画庁が「県民所得の標準方式」を作成し,県間比較可能な推計が行われることとなった。現在,県民経済計算は,都道府県・政令指定都市が93SNA及び平成7年基準に準拠した推計を行い,それぞれの都道府県等において公表している。また,内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部では,全都道府県・政令指定都市の経済活動別県内総生産,県民所得,県内総支出とその主要構成項目,実質経済成長率などを取りまとめ,「県民経済計算年報」として刊行している。

6 産業連関表

 日本における産業連関表は,昭和26年(1951)を対象年次とするものが最初であった。昭和30年(1955)表から,行政管理庁を中心に,総理府統計局,経済企画庁,農林省,通商産業省及び建設省の6省庁により推計体制が確立された。その後,運輸省,労働省,大蔵省,文部省,厚生省及び郵政省が参加し,11省庁による共同作業となり,5年ごとに全国表の基本表が作成されてきた。現在は,省庁再編を経て,環境省及び金融庁が加わり,10府省庁による共同作業となった。平成7年(1995)表は,519行×403列の基本分類により作成されている。なお,全国基本表の他,SNA産業連関表(内閣府),簡易推計による延長表,地域間産業連関表(共に経済産業省),都道府県産業連関表(都道府県)など,多くの産業連関表が作成されている。

7 用語の説明

国内概念と国民概念 ・・・ 「国内」とは,領土を指す。領土とは,国土に自国の在外公館などを加え,自国にある外国の公館や駐留外国軍隊などを除くものである。「国民」とは,その国の居住者を対象とする概念であり,居住者とは,企業,一般政府,対家計民間非営利団体及び個人を指す。たとえば,居住者たる個人とは,国内に6か月以上の期間居住しているものをいい,国籍は問わない。国内で設立されている法人も居住者である。「国内総生産」は,国内で行われる経済活動の総額を示すものであり,「国民総所得」は居住者が経済活動の結果として得る所得を指す。したがって,後者は,海外からの雇用者報酬,財産所得の純受取を含む。
取引主体の分類 ・・・ SNAは,「経済活動別」分類(広義の産業別分類)と「制度部門別」分類という二重分類を採用している。経済活動のうち政府サービス生産者,対家計民間非営利サービス生産者は,それぞれ制度部門の一般政府,対家計民間非営利団体と同じである。経済活動の産業は,制度部門の非金融法人企業,金融機関及び家計のうちの個人企業に対応する。
経済活動別分類 ・・・ 取引主体を財貨・サービスの生産に関する意思決定の主体として分類する。このため,技術的に同質的な事業所が分類単位及び統計単位としてとられる。経済活動別分類は,「産業」,「政府サービス生産者」,「対家計民間非営利サービス生産者」の三つに大別され,それぞれ細分される。
制度部門別分類 ・・・ 所得の受取りや処分,資金の調達,資産運用に関する意思決定を行う主体としての分類である。この分類は,所得支出勘定,資本調達勘定,貸借対照表勘定において用いられる。取引の主体は,「非金融法人企業」,「金融機関」,「一般政府」,「家計」,「対家計民間非営利団体」という五つに分類される。金融機関が独立した一つの部門となっているのは,金融において他の部門と全く異なる活動を行うからである。
市場価格表示及び要素費用表示 ・・・ 市場価格表示とは,市場で取引される価格による評価方法で,生産段階では生産者価格が,他の取引段階では購入者価格が用いられる。また,要素費用表示とは,各商品の生産のために必要とされる生産要素に対して支払われた費用(雇用者報酬,営業余剰及び混合所得,固定資本減耗)による評価方法で,生産者価格表示から生産・輸入品に課される税(控除補助金)を控除したものに等しい。
SNAでは,国内総生産及び総支出,国民可処分所得は市場価格表示で,国民所得は市場価格表示と要素費用表示の両方で評価されている。
雇用者報酬 ・・・ 被用者への報酬であり,賞与などを含む現金給与の外にも,社会保険への雇主負担,退職金などを含む。
固定資本減耗 ・・・ 構築物,設備,機械等再生産可能な固定資産について,通常の破損及び損傷,予見される滅失,通常生じる程度の事故による損害等による減耗分を評価した額であり,固定資産を代替するための費用として総生産の一部を構成する。
営業余剰・混合所得 ・・・ 付加価値の合計から雇用者報酬,固定資本減耗,生産・輸入品に課される税(控除補助金)を差し引いたものであり,推計上もこの手続きがとられる。68SNAで個人企業の営業余剰とされたものは,混合所得と呼ばれることとなった。これは,個人企業の所得に,経営者としての個人業主への報酬と労働所得としての性格が混在していると考えられるためである。
在庫品増加 ・・・ 企業が所有する製品,仕掛品,原材料等の棚卸資産のある一定期間における物量的増減を市場価格で評価したものである。
資本調達勘定 ・・・ 経済循環における実物,金融相互の関係を明らかにする勘定である。制度部門ごとに,実物面の資本蓄積(投資)及び資本調達(貯蓄)並びに両者の差(貯蓄投資差額)を記録する実物取引勘定と,貯蓄投資差額が金融によってどのように賄われたかを示す金融取引勘定からなる。
生産・輸入品に課される税 ・・・ 生産者に課される税で,税法上損金算入が認められ,負担が最終購入者へ転嫁されるものである。生産コストの一部を構成し,68SNAまでは間接税と呼ばれた。例としては,消費税,関税,酒税等の国内消費税,事業税,固定資産税などがある。
所得・富等に課される経常税 ・・・ 労働の提供や財産の貸与,資本利得などからの所得に対して定期的に課される租税と,消費者としての家計が保有する資産に課せられる税である。所得税,法人税,都道府県民税,市町村民税,家計の自動車関係諸税,日銀納付金が該当する。68SNAまでは直接税と呼ばれた。生産者が支払う自動車関係税は,生産コストの一部を構成するものとして,生産・輸入品に課される税に分類される。
社会負担・社会給付 ・・・ 社会給付は老齢年金など現金による社会保障給付,年金基金などからの現金による社会給付,生活保護などの社会扶助給付,退職金などの無基金雇用者社会給付,医療保険給付及び介護保険給付からなる現物社会移転の五つに分類される。社会負担は,社会給付を行う制度に対する負担であり,社会保障基金への雇主の強制的社会負担,雇用者の強制的現実社会負担,年金基金への雇主の自発的現実社会負担,雇用者の自発的社会負担,無基金制度への負担金である帰属社会負担がある。
社会扶助給付 ・・・ 一般政府及び対家計民間非営利団体から家計への移転のうち,社会保障制度を通じる以外のものである。一般政府分としては生活保護費,原爆医療費,遺族等年金,恩給などがあげられ,対家計民間非営利団体分としては,無償の奨学金などが含まれる。
消費者負債利子・その他の利子 ・・・ 「制度部門別所得支出勘定」の家計の支払財産所得のうちの利子は,消費者負債利子とその他の利子の合計で,消費者負債利子は消費者としての家計が支払った住宅ローン以外の利子であり,その他の利子は家計部門に含まれている個人企業が支払った利子である。「国民所得・国民可処分所得の分配」においては,消費者負債利子は家計(非企業部門)の利子支払として計上され,その他の利子は個人企業の企業所得から差し引かれる。
デフレーター ・・・ 名目価格から実質価格を算出するために用いられる価格指数をデフレーターという。国民経済計算では,実質化された価額(実質値)が不変価格表示となっていること,つまり,基準年次の価格で比較時の数量を評価した価額(P・・・価格,Q・・・数量,0・・・基準時,t・・・比較時)になっていることが原則である。したがって,名目値を除すデフレーターは,パーシェ型価格指数/でなければならない。このため,生産,最終消費,資本形成など実質化される集計量の各時点の品目別構成比が必要となり,これらは,コモディティー・フロー法から得られる。
コモディティー・フロー法 ・・・ SNAにおいて,一般に市場で取引される財貨・サービスに対する支出金額を推計するために用いられる方法である。国内産出と輸出入から国内供給額を求めることから始め,流通経路ごとに商業・運輸マージンを加えながら,中間消費,家計最終消費,固定資本形成及び建設業向けの四つの処分先に財貨・サービスを配分する。現在は2,187品目別に推計が行われている。
帰属利子 ・・・ 金融業の生産額を定義するための帰属計算項目であり,金融業の受取利子及び配当と支払利子の差額を指す。68SNAでは,帰属利子は,すべて産業が中間投入するものとして扱われる。その場合,帰属利子を各産業部門に分割することが困難なため,ダミー部門を設けてこの部門がすべての帰属利子を中間投入するものとし,同時にこの部門に同額の負の営業余剰が計上される。93SNAでは金融仲介サービスを,産業以外の部門へのそれも含めて,「間接的に計測される金融仲介サービス(FISIM)」として推計し,金融資産・負債残高を基に経済活動・制度部門に割り振ることを求めている。FISIMは推計上の問題なども大きく,93SNAでも68SNAの方式を認めているため,日本では68SNAの取り扱いを続けている。
正味資産・国富 ・・・ 一国あるいは各制度部門の所有する実物資産及び金融資産(株式を含む)の総額から,負債(株式を含む)を差し引いたものを正味資産といい,国民あるいは制度部門別貸借対照表のバランス項目である。国富とは,国全体の正味資産であり,実物資産と対外純資産の合計に等しい。
歴史的記念物 ・・・ 公的機関により,歴史的に重要性を持つものとして目録に記載されている建物及びその他の構築物,彫像などであり,文化財保護法の規定により,重要文化財等に指定されたものが該当する。購入のための政府の支出累計額を一般政府の貸借対照表の欄外に計上している。
無形非生産資産 ・・・ 負債と対になっていない無形資産であり,企業会計における特許権,実用新案権,著作権,商標権及び意匠権などが該当する。評価が困難であるため,公的企業,一般政府について国有財産台帳の残高を計上する外は,民間法人企業が購入した特許権等に限り,貸借対照表の欄外に記録している。93SNAは,特許権使用料などをサービス取引として扱うことを求めている。したがって,特許権などを生産資産とすることになるが,日本のSNAはそのようにしていない。なお,日本の国際収支表は,93SNAに従っている。

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